(円卓)ESDと東日本大震災

(公社)日本ユネスコ協会連盟理事 米田伸次

 

2014年の「国連ESD(持続可能な開発のための教育)の10年」の総括世界会議で採択された「グローバル・アクション・プログラム」(GAP)を踏まえ、わが国のESDも第2ステージの段階に入っている。人々のESDへの理解は少しずつ進んできているとはいえ、依然として教育分野からも「ESDの概念は不明」といった困惑の声も聞こえてくる。

これまでESDの普及、推進にあたって、関係者から「ESDの視点でいままでの実践をとらえ直す」「ESDは価値観を育む教育」などとしばしば語られてきた。この「ESDの視点とは」「ESDの価値観とは」については、必ずしもいままで十分に解明されてはこなかったのではないかと受け止めている。

1960年代から、ユネスコの提起した国際理解教育や民間ユネスコ活動に取り組んできた私は、「ESDは、2000年代になってはじめて提起された新しい概念ではない」「国連、とりわけユネスコが世界平和に向けて取り組んできた実績の延長上にある」と受け止めている。こうした経験を踏まえ、ESDのキーワードを「いのちの尊厳」「つながり」「多様性の尊重」「未来への責任」の4点で捉えている。

ところで、東日本大震災から5年が過ぎ「大震災を忘れない」との言葉が語られる現在、震災直後に識者たちによって喧伝された「現代文明の問い直し」「日本再生の契機」「日本人の価値観、生き方の問い直し」等々は、もう過去の話になりつつある。だが、被災地からメッセージされた、いのちの大切さ、絆の大切さ、放射線の恐怖を未来に残さない、は現在も一層の重みをもって私たちの心にせまってくる。被災地支援活動に参加したある中学生が語った、「僕は、被災地で生きている人びとを発見しました。いのちの大切さとは、困難にめげず一生懸命に生きることだと学びました」という言葉が忘れられない。

私も何度か被災地へ足を運ぶ中で、ESDを「21世紀の生き方を学ぶ教育であり、わが国の教育の根源的な変革を促す概念」と捉えるようになった。ESDを「黒船」として受け止めるのではなく、むしろ被災地からのメッセージをESDのキーワードと重ね合わせ「私たちのESD」を世界に発信していくことがESDの第2ステージでの大切な課題ではないかと考えている。

関連記事