(円卓)子どもの未来

玉川大学教師教育リサーチセンター客員教授 小澤良一

 
 企業に就職した教え子が「同僚の中に奨学金の返済額が多くて困っている仲間が何人もいる」と言う。奨学金とその利息の返済は、20代から30代までの給与では、肩に重くのしかかるのであろう。

一方、文部科学省委託研究「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」では、通塾などによる学校外教育費の支出と学力の関係についてまとめている。それによれば、小学校6年生国語A問題の正答率は、「支出は全くない」では53.4%だが、「5万円以上」では79.7%となっている。中学校3年生数学Aでは、同様の支出に対してそれぞれ54.1%、70.3%となっている。このように、学校外で支出している教育費と学力の相関が高いことがうかがえる。

また東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センターの「高校卒業後の予定進路(両親年収別)」によれば、両親合わせた年収と高校卒業後の進路、例としての4年制大学への進路希望と就職希望の状況は、年収600万円を境として歴然とした差を示しているとしている。

子どもの学びが家庭の経済状態に左右され、就職後も奨学金の「ローン返済」に追われるような状況は、どんな未来社会を生み出していくであろうか。富める者によりよい教育が保障され、より豊かな富を得る。その結果として、富める者の階層が再生産され、固定化し、社会不安が高まると、私は予測している。

連日、アメリカ合衆国大統領予備選挙が報道されている。「公立大学の学費無料化」「奨学金ローン対策」「所得格差是正」などを主張している立候補者が注目を集めている。1%の人が70~80%の富を保有しているともいわれる「超格差社会アメリカ」、格差が極端に進行した結果「階級化」したとされるアメリカ社会への本質的な問い掛けである。

「総中流社会」といわれてきたわが国日本。しかし、その状況に大きな変化がある。「貧困層」の増加と「富裕層」との二極化である。どんな状況であっても、家庭の経済状態で子どもの未来が左右されてはならない。教育は夢の実現、生きる希望に他ならない。学びの場の保障、能力に応じた学びの選択が自在に行える真に豊かな社会の実現を、今こそ強く願いたい。

関連記事