(円卓)ESDが終わる時

(公財)ユネスコ・アジア文化センターシニアアドバイザー 柴尾智子

 
「持続可能な開発っていっても、どれくらいの年数を念頭においているんですか」

数年前、ESD(持続可能な開発のための教育)について、岡山大学で大学院生さんから質問されたとき、私は「『2050年の大人づくり』をめざしている東京都多摩市では、一世代くらい将来のことを考えています…」と、口ごもっただけだった。

その院生さんには「ESDは科学的ではない気がする」とコメントされてしまった。それ以来、答えをずっと探してきた。そして今、暫定的回答は「1千年!」30世代だ。

私が子どものころ、太陽が膨張して地球が飲み込まれるのは100億年先と聞いた。今ではそれは50億年くらい先らしい。

また子どものころ、世界の人口は31億人だった。今の世界人口は70億人から80億人に向かっている。

「あなたたちが大人になるころには、枯渇しているからたいへんだ」と子どものころに聞いていた石油が、現在は余剰があり、そのことによって世界経済が不安定だという。CO2の濃度上昇による温暖化は大問題だが、地球上に約20億年前に生まれた生物圏は、CO2の不足により、5億年後には消滅するという説もあるらしい。そういった大切な数字や考え方はどんどん変化し、進化する。

億単位の年数は、たかだか数百万年の歴史しかない人類は、とりあえず考えなくてもよいのだろう。文明が生まれて1万年、産業革命から250年。1千年前の文学を幸運にも私たちは今でも楽しむことができ、そのころあった「会社」が、今も日本には結構たくさん続いているらしい。だからきっと「1千年後」はリアルな未来だ。

2014年11月。ESDに関するユネスコ世界会議が採択した「あいち・なごや宣言」は、「地球的課題の相互関連性に対する理解とその自覚から生じる責任」を担い、「不確実な状況における協働と意思決定」の力を身に付けることで、人は、自らを、また社会を変えていくことができるのだといった。

ESDは人類が続く限り、また人類が知性を持つ限り終えることはできない学びだと思う。現在、私たちと同時代に生きるとても困難な状況に置かれた数十億の人たちに対しても、それを同じ言葉で語ることができるのかどうか。この問いについても、答えを探していきたい。

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