(円卓)自然の中で感性を

宮城教育大学長 見上一幸

 

文具会社がノートの表紙の昆虫写真掲載をやめるというニュースがあった。その理由は、消費者が虫は気持ちが悪いと思うからだという。昆虫のファンも多い中で、顕微鏡でチョウの鱗粉を観察したら怖くなってチョウをつかめなくなった子どもとか、生徒がバッタを捕まえて誇らしげに見せたら汚いから捨てなさいと言った先生とかの話を聞いた。感じ方は人さまざまである。でも学校では、子どもたちが自然に親しめるように、生きものとの豊かな時間が持てるように、先生方はたいへん努力されている。

時代のせいなのか、生命尊重を謳いながら生きものをペット化して扱ったり、アニメ化したバーチャルな世界の生きものを可愛いと思い、人間の勝手な感情を移入したりする場合も多いように思う。悪いとはいわないが、ICTの目覚ましい発展によるバーチャルな世界の急激な発達の中で、子どもたちの環境意識や価値観は大きく変化しようとしている。だからこそ実際の自然に触れて、自然を、愛おしく不思議に思う感性を育て、生きる糧として命をいただくことへの感謝の気持ちを持つのも大切である。

私たちは、東日本大震災により「厳しい自然の中で人は生かされている」のを学んだ。大震災から5年。まだ復興は道半ばで、再び熊本で辛い地震が起ってしまった。被災地の皆さまに心からお見舞い申し上げ、一日も早い復興をお祈りしたい。
自然の猛威は水害や噴火など、地震だけではない。そして、自然との関わりの中で、環境汚染、食の安全、気候変動、エネルギー問題、新型ウイルスとパンデミック、民族間の紛争など持続可能な社会に脅威である問題は、人間の築いた文明や活動とリンクしているように思われる。

ICTの発達も、それによってもたらされるバーチャルな世界も、私たちにさまざまな恩恵を与えてくれると思う。その一方で、子どもたちを脆弱な文明の殻の中に閉じ込めないよう、身近な自然の中でのリアルな体験と感動を一層大事にすべき時なのかもしれない。

持続可能な社会づくりの担い手である子どもたちには、思考力、判断力、表現力など育成すべき能力の基礎として自然に触れ美しいと感じ、不思議だと驚く感性の育成が大事であろう。
私たちの住む世界が持続可能な社会であるために、自然に対する豊かな感性の育成が大切であると思う。

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