(円卓)地域は屋根のない学校

東京都教職員研修センター教授 税所要章

 

今年もホタルの季節が来た。東京都大田区立大森第六中学校では、ESDの環境教育の一環として、毎年、ホタルの幼虫を生徒が9カ月間水槽で育て、6月に大きくなった幼虫を隣接する洗足池に放流している。

洗足池には湧水が流れ込み、周囲の桜が美しい風光明媚な風致地区である。幕末・明治の勝海舟はこの景色にひかれ、洗足軒と名付けた別邸を建て、晩年を過ごしている。その跡地が大森第六中学校である。

洗足池は、戦前はホタルが舞う池であったが、昭和の高度成長期には、悪臭の漂う池になってしまった。その後、洗足風致協会等の水質浄化への懸命な努力があり、現在ではホタルが生息できるほど、きれいな水が戻ってきている。

同校では、洗足風致協会の支援を受けながら、戦前のホタルが生息する風情ある洗足池を目指し、平成22年から継続してホタルの幼虫の飼育に取り組んでいる。まだ数は少ないものの、自生が始まりだした。地域の関心も次第に高まり、放流式に参加されたり、7月になると光っていると知らせてくださったりして、毎年楽しみにしている方が増えてきている。また洗足池にはエサとなる貝が少なかったが、地域の方がたくさんのカワニナをまいてくださるなど、洗足風致協会はもとより、地域との協働の活動へと発展してきている。

同校は、農林水産大臣賞や文部科学大臣賞を受賞したESDを実践するユネスコスクールである。環境教育、防災教育、国際理解(交流)教育や平和教育など、地域に密着した教育を推進している。その中で、さまざまな活動を有機的に結び付けている根幹となるものは、地域連携である。地域連携は地域に協力をお願いするだけでは、一過性の取り組みとなり、やがて形骸化してしまう可能性が高い。学校は、地域に頼られ、期待され、溶け込み、地域との一体感から、なくてはならない存在になることが大切である。この中で、生徒は自己有用感が育まれ、地域への愛着と地域貢献への思いが高まっていく。

「地域は屋根のない学校」であり、地域はESD実践の観点である「かかわり」「つながり」を育む場である。世界への「かかわり」「つながり」は自分の住んでいる地域をいかに知り、地域にいかに結び付いているかが原点となると考えている。

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