(円卓)教育実習生の生徒指導力

鳴門教育大学長 山下 一夫

 

教育実習生と話していると、子どもたちとの接し方で悩んでいる学生は結構いる。

そのような学生に向けては、学校の中でモデルとなる先生をよく観察するようにと勧めている。

例えば、明るくさわやかな先生。普段からその子その子にあった話題を知った上で声かけをする先生。褒め上手で、叱るときには短く問題行為について注意する先生など。学生は先生をよく見ることによって、多くを学べるからである。

次に、臨床心理学の故河合隼雄先生の言葉(『子どもと学校』岩波新書)を紹介することにしている。

内容を要約すると――。教師として大切なことのひとつは、自分の仕事に楽しさを見いだすことである。そのためには、温かい目、長い目で、子どもたちをよくみることである。すると、子どもたちが実に面白いことをしてくれるのに気づくだろう。苦しみと楽しさがともにあるところに、仕事の深さがある――。

さらに、子どもの心を理解して、生徒指導力を身につけるためには、「依存と自立のサイクル」を知っていると役に立つ。

人間の心は、依存から自立へと直線的に成長するのではない。依存ができて、基本的な安心感や信頼感を育む安心基地があるからこそ、自立できるのである。

しかし、自立状態を維持しつづけていると、良い子の息切れ状態が起こったり、過労からうつ状態のようにダウンしてしまったりする。自立状態から、いかに上手に安心基地へと戻れるかが大切なのである。

このように依存と自立を繰り返しながら、人間は成長していく。

例えば、子どもが何か失敗したり病気やけがをしたりしたとき、なぜそのようになったかをすぐに注意したり教えたりするのではなく、まず子どもの状態を心配し、やさしく声をかけることである。依存の方向に向かっている子どもの心を受け止めることにより、子どもに心のエネルギーを補給し、信頼関係を築くことになる。

このような当たり前と思えることを行わないと、子どもの心を傷つけてしまう。

ところで、「依存」という言葉は否定的な意味合いをもつので、人によれば「アタッチメント」「甘え」「スキンシップ」を使う場合もある。私は「心のエネルギー補給」をよく使っている。

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