(円卓)学びのプラットフォーム

奈良教育大学准教授 中澤静男

 

小学校社会科学習指導要領解説の指導計画作成上の配慮事項に、「博物館や郷土資料館等の施設の活用を図る」と記述されている。その活用の仕方としては、(1)教員が自己の教養を豊かにするために博物館を訪れる(2)児童生徒に調べ学習の一環として博物館を見学するのを勧める(3)遠足や修学旅行等の学校行事における博物館の利用——に大別できるだろう。

この3つに共通するのは、活用する対象が博物館の展示物であるという点である。

ここでは、新しい博物館の活用法として、博物館学芸員について記したい。

本学では、月1回のペースで、学芸員・現職教員・大学教員によるESD教材開発セミナーを開催している。学芸員が授業の素材となる情報を提供し、指導案の作成や授業実践は現職教員が担い、授業化へのアドバイスを大学教員が行っている。

学芸員の展示物に関する知識には十分なものがあるが、それを子供の発達段階に合わせて授業化するスキルをもっているのは現職教員である。専門家がゲストティーチャー等で授業の一部分を担う機会があるが、授業全体を企画し、運営できるのは現職教員である。専門的な内容をやさしく丁寧に説明するのと、子供が自ら探究したくなるように授業化するのとは、根本的に違う。

子供を学びに向かわせる導入の工夫や、子供の意欲を継続させる発問を考えたり、体験的な活動や話し合い活動などを適宜設定したりできるのは、現職教員だけである。

いま教材開発セミナーでは、鎌倉時代にハンセン病患者の救済活動を行った忍性にんしょう菩薩について、それぞれの専門性を生かした授業化に取り組んでいる。

授業のテーマが環境問題のときは、地域の環境課題に詳しい市や県の環境政策課の職員に参加してもらった。多忙な現職教員には文献調査や現地調査など、十分な教材研究を行う余裕がなかなかない。その部分を担うのが専門家であり、現職教員と専門家の出会いをコーディネートし、学びのプラットフォームを形成するのが大学教員である。異なる専門性をもつ者が集まって学び合うことで、子どもにとって面白く学びがいのある授業ができていく。

このような学びのプラットフォームが各地に形成されることを期待したい。

関連記事