(円卓)2050年を想う

東京都多摩市立東愛宕中学校長 千葉正法

 

東京都多摩市の学校教育のキャッチフレーズは「2050年の大人づくり」である。

秋光輝く朝、いつものとおり通勤のバスに乗って最寄り駅に向かった。このバス路線の終着は駅ロータリーであるが、その一つ前のバス停の方が鉄道の改札口には最寄りのため、そこで通勤通学客がごっそり降りるのが通例である。

しかし、その朝のバスは停まるはずのバス停を通過し、私を含む多くの乗客が「しまった!」という顔をした。いつもは客の誰かが「降車ボタン」を押しているが、今日に限って誰もボタンを押さないまま、バスは無常にもバス停を通過したのだ。

誰かが終着のバス停で運転手に文句を言うことも予測していたが、全員がわが身から出た錆と察し、何事も人任せにしている日常を反省しているのか、淡々と順序よくバスを降りて、バスで来た道を無言で走って引き返していった。

公共サービスの在るべき姿として「降りる人がたくさんいるのは分かっているはず!」「なぜ、アナウンスで確認しなかったのか!」などと運転手を吊るし上げることも有り得たが、「車内放送のとおり、降車ボタンが押されないと止まらないシステムですので」などとSiriのような音声案内口調で答えられた時のばつの悪さを皆が予想できたのかもしれない。

このことについて、朝礼で最善の解決策は何かと生徒たちに問いかけてみた。2050年の主人公たちは、さまざまなアイデアをもっている。道徳的に探究しようとしたり、AI(人工知能)社会を身近に感じさせたりするような答えも出てきた。「校長先生が大声を出してバスを止めればよかった」という明解な答えもあって、考え、議論する朝礼となった。

翌日、ふと気になって教え子の第四次産業革命の研究者に、最新技術ではどのようにこの問題は解決が図られるのかと確認してみた。その回答は「すでに顔認証と乗降データの蓄積により、対応可能」とのことであった。

さて、革新的テクノロジーが2050年には人としての在り方や生き方をどう変えているのだろうか。そして、ヒューマン・エラー解消策が出尽くした後に、ヒューマン・コミュニケーションとして何が残るのだろうか。

また生徒たちと考えてみたくなってしまった。

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