(円卓)開かれた学校と犯罪の減少

大谷大学文学部教育・心理学科教授 岩渕信明

 

先日、京都で、認知症の人を探す地域の取り組みを見かけた。社会福祉協議会の会員、民生・児童委員、少年補導委員など、地域団体の大人に交じって小・中学生も参加していた。認知症の人を見かけたら、どうしたらいいのか、子供も大人も共に学んでいる。地域ぐるみで、高齢者にやさしいまちづくりが進んでいる。

平成14年度から「開かれた学校」への取り組みが、完全学校週5日制とともに始まった。学校を開いて、学校・家庭・地域社会の連携を進め、地域の人がゲストティーチャーとして子供の教育に関わるようになっていった。それまでは見知らぬおじさん、おばさんであったが、「昔遊びを教えてくれるおじさん、おばさん」と子供から声がかかるようになった。「地域の子供は地域で育てる」活動であり、この機運は大人の意識を変えていった。
「刑法犯認知件数」の推移が今年7月、新聞に掲載された。ずっと増加をしていた刑法犯の認知件数が、平成14年をピークに減少に転じているのである。地域で子供を豊かに育てようという動きは、大人の犯罪を減らすことにも一役買ったのだろうか。

「地域社会の大人もしっかりしなくっちゃ」という意識変革が起こっている。刑法犯の少年の検挙人員や成人の検挙人員も、同様に減少している。現行の学習指導要領に「規範意識を育てる」という項目が明記され、開かれた学校の取り組みと相まって、犯罪のない安心して暮らせる社会を創る教育が進められている。

今、次期学習指導要領に向けた改訂作業が急ピッチで進められている。近いうちに告示される次期学習指導要領の目指す柱は「社会に開かれた教育課程」であるようだ。教育の重点は「何を知っているか、何を教えるか」に置かれていたが、今や、「何ができるか、人生にどう生かしていくのか」に重点を移している。「地域社会で子供を育てる」から、「よりよい地域社会やくらしをどう創り上げていくのか」へと一歩進められようとしている。

凶悪な犯罪報道を多く目にする今日であるが、数字の上では確実に教育効果をあげて、犯罪の減少する住みよい社会づくり、まちづくりが進んでいる。

あらためて、教育の及ぼす力、果たす役割の大きさを感じるこのごろである。

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