(円卓)ドゥテルテ大統領雑感

地球システム・倫理学会理事 清水良衞

 

フィリピンのドゥテルテ大統領が10月25日に来日した。「フィリピンのトランプ」ともいわれ、思ったことを口にする。国際儀礼に関して今後どれほど成長するか、かえって楽しみだ。ミンダナオ島ダバオでの学生時代からアメリカのフィリピンへの影響に批判的で、国の自主独立の在り方を模索してきた。

私は、政府交換留学生として国立フィリピン大学に、他の2人とともに赴いた。半世紀近く前だ。

キリスト教国フィリピンの首都マニラから遠く南に離れたミンダナオ島は、イスラムの人々が多い。後発のこの地が、大統領の出身地。島の中心ダバオには失業、麻薬、犯罪、銃があふれていた。市民生活を平和に保つには厳しいとされ、その難問に市長として20年も取り組んだ。その結果、夜間でも安全な街になった。中でも麻薬問題の解決は最大の目標で、その努力が今も続く。

この島には共産党組織やイスラム過激派組織があり、反政府抗争を続けてきた。この国が抱える難しい状況である。もっとも、この種の困難を抱えているのはフィリピンに限らない。かつてのチェコスロバキアでは国が分裂し、ボスニア・ヘルツェゴビナでのイスラム教徒とキリスト教徒の抗争は内戦に発展。多大な悲劇を招いた。

来日中にドゥテルテ大統領は東京で、在日同朋に向けて「皆さんが家族の元に帰り、出稼ぎをしなくても生活できるような国にしたい」と語りかけた。これまでのこの国の大統領の口から、このような言葉は聞いたことがない。スラムで生活している人々を他所に移し、生活の場をつくるとの話も出た。この大統領は、立派な政策ビジョンを持っている。激しい言葉を発する姿の底には、優しい思いが流れている。

フィリピンは有り余る太陽光と水で、三毛作、四毛作も楽にできる地が広がっている。その点、日本よりもはるかに豊かな国だ。このことを思うとき、戦後日本の土地改革を思い起こす。敗戦後の占領下での財閥解体と大地主の農地を小作人に分与する土地改革。それらがその後の発展に貢献した。この点、フィリピンでは戦後も、宗主国スペイン時代の大地主制が残っていて小作人は今も多い。これもドゥテルテ大統領の今後の課題だろう。

フィリピン人は明るく、よく働く。英語力もある。今後の発展を大いに期待する。

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