(円卓)海と人との共生を

東京大学海洋教育促進研究センター主幹研究員 及川幸彦

 

四方を海に囲まれる島国の日本は、「海洋国家」と言われ、古より海に寄り添いながらその豊かな恵みを享受し、独自の文化や伝統を培ってきた。

しかし、現代に生きる私たちは、海の仕事に携わる人々やマリンスポーツを楽しむ人々を除けば、どれほど海を意識しながら日々の生活を送っているだろうか。

かつてレイチェル・カーソンがアメリカのメイン州の海岸を舞台に『センス・オブ・ワンダー』に著したように、海(自然)の神秘や不思議に驚嘆する心、目をみはる感性を私たちはどれほど持ち得ているだろうか。

「母なる海」と言われるが、海は学びの宝庫でもある。生物や環境はもちろんのこと、海に関わるさまざまな文化や伝統、経済や社会、そして国際と多様な分野を包含する。

また、恵みの海は時として「畏れ」の対象ともなる。東日本大震災では巨大な津波によって、多くの尊い命や財産が奪われた。そこに確かにあったコミュニティーや地域の絆、そして故郷を存亡の危機に至らしめた。

その恵みと畏れを含めて、海に親しみ、海を知り、海を生かし、海を守る学びを通して、海に寄り添いながら「海と人との共生」をめざす学びが「海洋教育」であり、それは海洋の持続可能な保全と活用、そして海と人との関係性を構築する学びである。

この意味において、海洋教育は、海を通した「持続可能な開発のための教育(ESD)」とも捉えることができる。

現に国連の「持続可能な開発目標」には、「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」ことが掲げられ、世界共通の目標となっている。

海を縦糸に、人を横糸に紡ぐ「海の学びのストーリー」には、「海を感じる体験学習」と「その神秘を解き明かす探究学習」「学習を豊かにする地域や専門機関との連携」が編み込まれるというカリキュラム・マネジメントが実現され、子供たちが目を輝かせ、主体的・対話的に深く学ぶアクティブ・ラーニングが実践される。

現在、地域の自然や歴史、文化、防災など、それぞれの特性を生かした海洋教育の輪が、全国に広がっている。海岸部、内陸部を問わず、教育の創造的なアプローチとして、海の学びの進展に期待したい。

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