(円卓)いじめの冤罪に注目

神田外語大学教授 嶋崎 政男

 

いじめ防止対策推進法が施行されて3年。同法附則第二条により、再検討の時を迎えた。このほど文部科学省有識者会議の提言案が発表されたが、各教育委員会・学校においても「基本方針」の見直しが必要となる。

私も、数市でいじめ問題連絡協議会に関わらさせていただいている関係で、同法の「通信簿」を作成してみた。厳しい評価としたのは、第二・九・十八・二十三・二十八条の5カ条である。中でも第二条「いじめの定義」には強い懸念を抱いている。

悲惨ないじめ問題が続発する中で、「いじめ対応を最優先事項に」「適切な認知と情報共有を」との提言は重く受け止めなければならない。

しかし一方で、学校現場や教育委員会を悩ませている「いじめ利得」ともいえる現象と「いじめの冤罪」が存在することを、多くの人に知っていただきたい。「いじめ利得」とは、疾病利得にならって「いじめ」を錦の御旗に、学校や教育委員会に理不尽な苦情や過大な要求をすることを指す。

もちろん、いじめの訴えには真摯に対処しなければならない。はなから「いじめ利得」を疑うような姿勢は、絶対に取ってはならない。

問題となるのは、いじめとして認知できない(法の定義では「当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」となっているが)ケースでの保護者からの無理難題で、これが「いじめの冤罪」を生み出す温床となっている。昇降口で「さよなら」と声をかけられた女児が、その声が聞こえなかったために返答しなかったのを「いじめ」と訴えられた事例では、「被害者」の保護者の要求は「返答しなかった女児に学級全員に無視される経験をさせよ」というものだった。

文化祭のクラステーマ決定の際、自分の意見が通らなかった女子高生が支持を得た提案をした同級生を「いじめの首謀者」と名指した事案がある。保護者は「校則に従って『首謀者』を退学処分に」と要求を繰り返した。

国の基本方針「5.いじめの定義」には、いじめに該当するか否かを判断する際の配慮事項が記されている。しかし今、「冤罪」事例が各地で報告されている。いじめによって尊い命が奪われることは断じて防がなければならない。「冤罪」による場合もまた然りである。

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