(円卓)「学力調査の時代」に

筑波大学人間系教授 清水美憲

 

2つの大規模国際学力調査の結果が相次いで公表された。3年ごとに実施されるOECDのPISA(生徒の学力到達度調査)と4年ごとに実施されるIEAのTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の、2015年調査の結果である。

3と4の公倍数である12年ごとに、この2つの大規模調査の実施年度が一致し、その翌年のほぼ同時期に結果が報告される。この結果は、教育政策を評価する指標として報告され、マスメディアによってさまざまに解釈されて報道される。

今回は、数学と理科の結果については、TIMSSでは「過去最高の得点」が、いわゆる「脱ゆとり」効果の現れであるといった論調の報道が見られた。新聞報道では、数学的応用力や科学的応用力と呼ばれるPISAの数学的リテラシーや科学的リテラシーの調査結果は「理数系で順位上昇」(日経、昨年12月7日)のように、標準化された平均得点に基づく順位が前回を上回り、科学に向かう態度に改善が見られたなどが報じられた。

このような報道は、12年前にTIMSSやPISAをめぐって「『学力トップ』陥落の衝撃」(朝日、平成15年12月8日)といった新聞記事が注目を集めたのとは、対照的であった。

国内では、19年から実施されている全国学力・学習状況調査が10年目を迎えて学校現場に定着してきた中で、新しい姿での調査の生かし方が模索されている。また31年度から実施される予定の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や、32年度から導入される「大学進学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施がどのように設計されていくかも、注目を集めている。

このような「学力調査」の時代とでも形容すべき今日、注意しなければならないのは、ペーパーテストやコンピュータを用いたCBTで測定される学力は、学力の一側面である点である。またこのような調査・テストには、学力の把握のための科学的アセスメント、あるいは入学者選抜の手段という機能に加え、その調査・テストを受けた児童や生徒の学習が深化するという側面があるのも忘れてはいけない。

多様な実施主体による調査・テストも、児童や生徒にとって大切な学習の機会であるという観点から見ると、調査・テストを生かした学習指導の充実が注目されるのである。

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