(円卓)ESDのDとは

奈良教育大学教授 高橋豪仁

 

ESDは”Education for Sustainable Development”の略。「D」の”development”を手元の英和辞典で引くと、最初に「発達、成長、発展」とあり、次に「(資源・事業などの)開発、拡張」と記されている。

文科省サイト内の日本ユネスコ国内委員会ページでESDは「持続可能な開発のための教育」と訳されている。従来は「持続可能な発展のための教育」とされており、略称として「持続発展教育」を用いてきたが、2014年のユネスコ世界会議に向けて日本政府内の訳語を統一する必要があるため、政府文書では「持続可能な開発のための教育」となった。かつての「持続可能な発展」だと、いつまでも発展し続け、右肩上がりの経済成長がイメージされる。

環境教育で3R(リデュース、リユース、リサイクル)が学ばれる。3つのRに取り組み、ごみを限りなく少なくし、環境への悪影響を減らすことや、有限の地球資源を有効に繰り返して使う循環型社会を構築するのを理想とする。経済発展し続ける社会のあり方とは、向かう方向が真逆のように思える。

では、「開発」ではどうだろうか。『新社会学辞典』(有斐閣)によると、「開発」は経済開発と社会開発に区別される。前者は産業の創出・改善によって所得向上がなされ、雇用の拡大や消費生活水準の上昇を図るものである。後者は、経済発達の不均衡や格差の拡大が生じ、特に発展途上国における失業、貧困、疾病、教育、住宅などの社会的問題に対応して、従来の経済開発のあり方に対する反省から、1960年頃から国連によって提唱されたものである。

従って「開発」とは経済開発を基底としつつも、格差を是正する社会開発を含む観点から、人々の生活の改善・向上を図る計画的意図的な行為となる。人類全体が、国家間や地域間で生じる不均衡を問題視しつつ、この地球上で限りあるエネルギーを利用しながら生産と消費を継続して生存し続けることが、「持続可能な開発」なのかもしれない。

一方で、国連開発計画の「人間開発」のコンセプトにも注目すべきだ。それによると、各々にとって価値ある人生を全うすることを人々に可能とする、選択肢を拡大することが「開発」となる。

ESDの概念については、広島大学の樋口聡先生がまとめている(学習開発学研究(9)、3―12、2016)。

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