(円卓)日本の強み

埼玉県立総合教育センター所長 武内道郎

 

昨年、二度にわたりブラジルを訪問する機会を得た。ブラジルNGOのLFC(ラル・ファビアノ・デ・クリスト)が運営する社会教育活動施設と埼玉県教育委員会による、JICA草の根技術協力事業である。埼玉県立総合教育センターでブラジルの先生方に表現活動や情報教育、カルタや双六を使った国際理解教育などの教育技術を学んでいただき、現地で他の教員に広める取り組みである。

研修のために埼玉県に3週間ほど滞在した先生方が驚いたのは、電車の時間の正確さ、町にごみが落ちていないこと、落し物が戻ってくることなどである。「いつの時代のどの教育者の理論により、このようなモラルが育まれたのか教えてほしい」と聞かれた。これらを育む教育手法をブラジルに持ち帰りたいと言う。普段は意識しないが、海外の方に指摘され、改めてその素晴らしさを再認識した。

同時に、この強みは今後も守られるだろうかと心配になった。

家庭や地域の教育力の低下、SNSの広がり、モラルの低下、将来の日本が心配になる事件も絶えない。LFCの先生方は日本に学んで、埼玉県で作成した家庭向け子育ての目安「3つのめばえ」を参考に、ブラジル版の家庭教育のあり方リーフレットを作成し、家庭に配布している。教育活動を保護者に体験させるファミリーフェスティバルを通して、共に子供を育てる取り組みも始めている。

さて、英語教育、プログラム教育、主体的・対話的で深い学びなど、学習指導要領改訂案が公表された。人工知能やロボットなどに代替されない能力を子供たちに育む教育が求められている。今日の日本の繁栄を形作った強みを再認識し、教育の土台とすべきではなかろうか。日本人の勤勉さ、我慢強さ、協調性などの強みを改めて認識し、意識的に育んでいくことが大切ではないか。

そのために何をすればよいのか。学校においては挨拶などの礼儀であり、学級会活動や清掃活動、特別活動や部活動であり、これらを通して育まれるものであろう。もちろん、家庭や地域とともに育むべきものもあろう。

これまでの日々の教育活動を確実に、丁寧に積み重ねれば、日本人の持つ勤勉さ、真面目さ、我慢強さ、チームワーク、協調性は、百年後の日本にあっても世界に誇れる財産であり続けると思う。

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