(円卓)防災教育から減災教育へ

東京大学海洋教育促進研究センター主幹研究員 及川 幸彦


今夏の西日本豪雨や西日本を相次いで直撃した台風、そして先日の北海道を襲った地震と、最近の全国で連続する自然災害の苛烈(かれつ)さと被害の甚大さには、皆が驚愕(きょうがく)し危機感を持っている。

そのような巨大化し頻発する災害からかけがえのない命を守るために、教育はどのような役割を果たすことができるのだろうか。

日本では、防災教育という名前が、学校現場をはじめとして人口に膾炙(かいしゃ)されているが、そもそも人間が自然の猛威である自然災害の全てを完璧に防ぎきれるわけではない。

私たちはそれを、東日本大震災をはじめとする過去の大災害から教訓として学んだはずである。

したがって、100パーセント防げないことを前提に、災害のリスクや被害をいかに最小限にとどめるか、軽減できるかという「減災」という概念で教育を進めなければならない。それが「減災教育」であり、今後は、防災教育から減災教育への転換が求められる。

それでは、減災教育とはどのような教育であろうか。私は、それには四つの内容・段階があると考える。

一つ目は、地震や津波、台風などの災害の元となる自然現象の発生メカニズムを科学的に理解する段階(知識・理解)である。

そして二つ目は、それらの自然現象が人間社会や生活に与える影響を災害として認識する段階(因果関係の認識)。

三つ目は、災害をどのように軽減し緩和するかを考え、そのために備え、行動する段階(備えと適応)である。

最後は、災害後の「より良き復旧・復興」をめざして参画し貢献するための能力を高める段階(参画・貢献)である。

これらの学びは、災害という極限的で持続不可能な状況を乗り越え、「持続可能な社会を創造する教育=ESD」のプロセスに他ならないと考える。

また、ESDの視点で減災教育を展開することは、「持続可能な社会の創り手」を育成する新学習指導要領の理念とも整合性を持たせることとなる。

さらには、世界各地で気候変動による災害が猛威を振るう中で、その緩和のためには地球規模での行動が求められることから、減災教育は「持続可能な開発目標(SDGs)」の枠組みで取り組まれるべきである。