(円卓)教師に必要な「五気」

大谷大学文学部教授 朝比奈 覚順

障害のある子供の教育に、立場は違うがおよそ40年携わってきた。今は、大学で学校教員を目指す学生の指導、特に特別支援学校の教員を目指す学生の育成に関わっている。さまざまな学生がいて、毎日さまざまなことがありとても面白い、いや楽しいことがある、やりがいのある職場だ。

私が赴任した年から、特別支援学校教諭の免許課程ができ、4回生の教育実習に臨んだのは20人ほどになった。「特別支援学校教員を目指すもの」「専門的な知識をもって、小学校や中学校の教員を目指したいもの」に分かれる。

私にとってはとてもうれしいことがあった。ある遠くの県から出てきた学生が、実習を終えて、私のところにやってきた。「先生、私は、今度の実習を終えて、考えが変わりました。ぜひ特別支援学校の先生になりたいです」と言うのだ。その理由を聞くと、「自分は小学校の先生を目指していたが、今度地元の特別支援学校の実習に行って、『障害のある子供たちが真剣に生きている』その姿を見て、自分があるべき教師像を見つけたような気がしました。それに小さなことでもできたときの達成感が半端じゃなかった。あの笑顔が忘れられません。だから、特別支援学校の教師を目指し、がんばりたいと思います」と言う。やりがいを感じてくれたこの学生の、生き生きとした笑顔を私は忘れない。

私が、障害のある子供の教育に取り組み始めたころの新設養護学校の校長の話を思い出した。これぞと思う教師一人一人を校長室に呼んで話し込み、教師を育てることに尽力されていた。正直、「またか」という気持ちもあったが、今思い出せば、私にとって40年もの間、障害のある子供の教育に携われたのはこの先生があればこそだと思うことばかりである。その先生から、「障害のある子供の教員にとって大切なのは『五気』である」とよく言われた。

教師には、情熱を持って粘り強く取り組む「根気」、いつも明るく健康で元気に取り組む「元気」、余裕を持って取り組む「呑気」が大切だが、これに加え障害のある子供の教育では、子供のできることを取らないでちょっと待つのを大切にする「待つ気」、子供も教師も「これがやりたい、やってみたい」という気持ちを大切にする「やる気」、これが「五気」だと言われた。

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