(円卓)思考ツールから考えをつくり出す

関西大学総合情報学部教授 黒上 晴夫

2012年に、小冊子『シンキングツール~考えることを教えたい~』(NPO法人学習創造フォーラム)をウェブ公開して以来、シンキングツールが驚くほど普及した。

今回、『小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編』においても、比較する、関連付けるなどの「考えるための技法」を指導するときに、「いわゆる思考ツールといったものを活用することが考えられる」(47ページ)とも示された。

ところが、実際にはシンキングツールを活用しても、その効果が思ったほど感じられないことが多いようだ。さまざまな理由が考えられるが、活用手順のイメージに原因があるように感じられる。

ベン図はよく、二つのものを比較するために用いられる。二つのものの共通の特徴やそれぞれに固有な特徴を書き分けやすいからだ。

ミカンとリンゴの特徴を、ベン図に書き込んでみよう。色や形、味などについて、各自が自己の体験に基づいてさまざまな特徴を書き出すだろう。そこまではよい。しかし、その先がある。

ベン図に特徴を書き出すだけだと、自分の知っていることや感じたことを整理しただけで、まだ考えを生み出したことにはなっていない。

ベン図に書き出した特徴を俯瞰(ふかん)して、「同じ果物なのに、味が全然違う。だからミカンを食べたくなるときと、リンゴを食べたくなるときも違う」「違う果物なのに、どちらも丸い形をしていて、バナナとは全く違う形だ」というような考えをつくり出すために使いたい。

授業を組み立てるときには、そのような場面をつくることになる。

つまり、シンキングツールに考えが書き出すのが活用の目的ではなく、シンキングツールを基にして考えをつくり出すことを目的にしなければならないということだ。だからシンキングツールは、計算用紙のようなものだとみるのがよい。

そして、考えをつくり出すためには、書き出したアイデアをどのように扱えば考えたことになるのか、その手順を身に付けておく必要がある。

特定のシンキングツールを初めて使うときには、そこからどのように考えをつくり出すのか示す必要がある。基本的な手順が身に付けば、状況に応じてそれを応用することもできるようになる。

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