(円卓)「深い学び」のふるさとを訪ねて

工学院大学非常勤講師 小田 勝己

今年の2月下旬に米国のボストンの隣町、ブルックラインに行ってきた。

日本の教育界では、あまりこの町のことは知られていない。

だがこの町、実は知る人ぞ知る存在である。いわゆる「深い学び」を1980年代から実践してきていることで知られているのだ。

その発案者であり、当時の教育長であったジェームズ・スパーバー氏のことは、日本においても当時のNHK教育番組「テレビコラム」でも紹介されたと聞いた。
今回、対応してくれたのは、理科教育を担当しているジャネット・マクニール(Janet MacNeil)さんである。マクニールさんからは、この町が「深い学び」の発祥地としてのプライドを示す、現実的でありながら深い、理科教育における新しい方法を教えてもらった。

これなら日本の「深い学び」でも使えるはずだ、と感じた。一言で言うと、「あなたは(例えば)光合成をどのように理解しましたか」のような、個に応じた指導と学びなのである。
全員が自分なりの道を歩いてゴールを目指す点は、30年間変わっていない。変わったのは、授業形態を整えた点であろうか。深い学びは個別対応なので、授業形態を整えたほうが、むしろうまくいくという考え方のようだ。本当に有益な示唆をもらった。

筆者は現在、都内の教職大学院で院生とこの方法での教材づくりを進めている。

ブルックラインの「深い学び」のポイントは、生徒たちが個別に理解していった学びのプロセスを「ストーリー」として文章化すること、すなわち理科と国語をうまく組み合わせたことだ。
マクニールさんいわく、ストーリーという表現は誤解されやすい。しかし、学びに深さを保障するには非常に有効な方法だという印象を持った。

理科だから具象物は豊富にある。このことも深い学びを成功させる「秘伝」である。

子供たち、生徒たちの身の回りに無限に存在する理科学習のために、具象物に目を向けてもらう。マクニールさんは個人的には化石や土壌に強い関心があり、それらをうまく教材化してきた。
「小さな問い」と本質的な問いを組み合わせるこの町の理科教育は、間違いなく、日本の「深い学び」の手本になる。