(円卓)エビデンスの供給と活用

(独)教職員支援機構上席フェロー百合田 真樹人

2013年国際教員指導環境調査は、日本の中学校教員の長時間労働の実態を示して社会の関心を集めた。平成28年には文部科学省が教員勤務実態調査を実施。6割近くの中学校教員の勤務時間が過労死ラインを越え、教員労働時間も全職階で前回調査を超えた。

教員勤務実態への関心が集まり、課外活動に多くの指導時間が充てられていることが明らかになった。教員指導環境調査では日本の教員の課外活動指導時間が参加国平均の4倍に及び、勤務実態調査の結果は、土日の部活指導時間が10年間で倍増していた。

文科省は昨年末、「学校における働き方改革に関する緊急対策」を公表。部活外部化や勤務時間管理の徹底等による教員の業務負担の軽減や勤務環境の適正化に向けた方針を示した。学校業務の量的整理や勤務時間管理の必要性は明らかだ。しかし、これらが教員の多忙化解消に与える効果は限定的だろう。

部活動指導時間が長く、土日では過去10年で倍増しているにもかかわらず部活外部化への教員の賛否は拮抗する。2015年調査では、公立中学校教員の4割弱が部活動を本来的業務と認識。また教員志望動機に部活動指導をあげる学生もいまだ少なくない。

出退勤管理の厳正化も労務管理外の長時間労働の把握には至っていない。教員の多くが業務過多を口にするが、勤務実態のエビデンスを供給する必要性を認識して主体的に取り組む教員は必ずしも多くない。

課題の抽出と克服には、正確な実態把握が欠かせない。正確な実態調査に基づくエビデンスに欠く政策や施策は、再現性にも乏しく八卦(はっけ)と変わらない。

同様に、実態調査から得たエビデンスを軽視する主張は無為である。エビデンスを軽視する主張は思い込みとの区別がつかず、実態調査コストと非建設的な議論にかかる時間と労力と二重三重の無駄を生む。賛否はあるが、働き方改革は一定のエビデンスを基に検討が進む。しかし、改革対象であり協働主体でもある学校現場や教員によるエビデンスの供給と活用はまだ十分ではない。

教育改革等のエビデンスにアクセスすることは、今後ますます容易になる。自ら情報を集めて分析し、エビデンスに基づいた判断をする教員の養成・研修の枠組みを検討する時期にある。

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