(円卓)タブレット導入前の踏み絵

教育ICTコンサルタント 小池 幸司

 「このLINEグループ、もう入った?」通勤中の電車内で、真新しい学生服に身を包んだ高校生の会話が耳に入ってくる。

この春、わが家の長男も高校1年生になったが、入学式で顔を合わせる前に、新入生同士がSNSでつながることが当たり前になってきている。最近では中学生でも同様の動きが見られるというから、子供たちのコミュニケーションの形は目まぐるしく変化していると言える。

一方で、学校現場における、教師と生徒のコミュニケーションはどうだろうか。3人の子を持つ親の立場からみたならば、その変化は自分が学生の頃のそれと大差ないように映る。

教育現場でタブレットなどのICT活用を広める活動を始めて7年がたった。その間、数多くのタブレット導入校を訪問して、授業見学や取材をしてきた。最近では始業のチャイムを聞く前に、その成否がなんとなく分かるようになってきている。

ICT導入がうまくいっている学校では、明らかに教師と子供たちとの関係性がいいのだ。休み時間の授業準備の様子を見ても、児童生徒が主体的に動いていて、教師がそれを見守り、サポートする関係性ができているのである。

よく「学校でICTを導入することで起こる一番の変化は?」という質問を受ける。そんなときには「教師と児童生徒の関係性が変わります」と答えるようにしている。実を言うと、この回答は半分本当であり半分はうそである。「教師と児童生徒の関係性を変えようとしないのであれば、ICTを導入してもうまくいかない」というのが本音なのだ。

批判を恐れずに言うならば、これまでの教師と児童生徒の関係は「刀狩り」を前提としたものだったのではなかろうか。タブレットという「学びの武器」を与えておきながら、これまで通り子供たちを管理・統制しようとすれば、必ず矛盾が生じる。

教師の指示通りに40人が一斉に同じ作業をさせるのであれば、ICTなど無用の長物にしかならない。

ICTの「C」は「コミュニケーション」のCである。これから学校や自治体でICT導入を進めようと考えているのであれば、まずは、児童生徒との関係性をどのように変えていくのか、変える覚悟があるのか、を問うてほしい。

 

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