(円卓)教採試験の倍率の低下

帝京科学大学教育人間学部教授 釼持 勉

2019年度教員採用試験が、6月の北海道を皮切りに全国の自治体でスタートした。改めて、倍率低下について考えてみたい。

現状、小学校では3倍を切る自治体が16都県(新潟県1.2倍、福岡県1.3倍、佐賀県1.8倍など)あり、中学校でも低下傾向(京都府7.7倍(前年度13.0倍)、新潟県2.6倍(同6.0倍)、和歌山県6.1倍(同9.6倍)、東京都5.0倍(同9.6倍)にある。この状態は、来年度以降、さらに深刻化するかもしれない。

要因には次の3点が挙げられよう。

①人材育成が滞っている…大量退職、大量採用時代の人材育成の成果が十分に出ていない。大量採用に対して、指導する側が足りていない。特に今年度は、全国で教員不足が露見し、学校の機能が停滞する事態まで起きている。

②大学の出口論、教委・学校の入り口論が保たれていない…大学はビジョンを持って人材を輩出しているか。採用試験合格までが中心で、翌年4月から教壇に立つ意味を踏まえた取り組みが少ない。教委は、合格者の研修で地区の教育の特徴や校種別の学級経営の在り方を学ばせないまま現場へ送り込む。着任校は「知っているはず」の認識で4月1日を迎えて、学級担任を任せる。三者の重層構造の指導体制があってこそ、新任教員が育つ。

③「学校の働き方改革の推進」「教職のブラック化」の影響が払拭(ふっしょく)されていない…現段階では、時間管理にシフトしている教育界ではある。学校業務全般、調査、事務量などは増加しているのが実情だ。時間管理によらずに校務処理をしてきた従来から転換するには時間がかかる。ましてや、各教員は効率的な取り組みが未成熟であり、学校全般の仕事量を削減する手だてはない。結局、校務が滞ることにつながる。

「教師の働き方改革」の推進において足りない点が、教員採用試験の志願者減少に拍車をかけている。人材育成をしてこなかったことと、現場教師が教職の魅力を語ってこなかったこと、これらが結果として倍率低下を招いたとは言えないだろうか。

単に倍率低下と受け止めるのではなく、教育界全般にわたり赤信号がともっている危機的状況であると認識して、関係各機関がビジョンを持ってかじ取りしていくことが求められている。