(円卓)18歳の「大人」を育てる

玉川大学教授 樋口 雅夫

今年6月、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることなどを規定した、民法の一部を改正する法律が成立した。

この改正民法は、2022年4月1日から施行され、高等学校の3年生の教室では「大人」と「子供」が入り交じって授業を受けることとなる。

今回の法改正は、3年前、公職選挙法改正により18歳選挙権が実現したときに匹敵する、いや、それ以上のインパクトのある出来事である。

高等学校における教育の在り方そのものが変わらざるを得ないほどの一大事なのだが、管見の限りでは、教育関係者の間での関心の高まりが今ひとつのようである。

法改正直後の新聞報道などでは、「成人式はどうなるのか」「飲酒、喫煙も18歳で認めることになるのか」といった点に関心が向けられていたが、ほかにも、保護者の同意を得ずに結んだ契約を取り消すことができる年齢が18歳未満となることにより、18歳、19歳の消費者被害が増加することへの懸念などがある。

このまま関心が高まらない傾向が続くと、22年の直前になって慌てることになってしまう。

しかし、悪い話ばかりではない。折しも、今年3月に高等学校学習指導要領が改訂・公示され、社会に参画する主体として自立することや、他者と協働してよりよい社会を形成することなどについて考察する新科目「公共」が、公民科に設置された。

「公共」は、22年度の高等学校入学生から学ぶこととなっている。

消費者の自立支援などを扱う家庭科教育の一層の充実と相まって、「18歳成人」に求められる資質・能力が効果的に育まれることが期待される。

これまで、わが国の初等中等教育では、「子供」をいかに育んでいくか、ということが目指されてきた。今後は、未成年である「子供」を育むことはもとより、18歳の生徒を文字通り「大人」として処遇し、これからの社会の創り手である自覚や責任感が一層養われるような指導の手だてを講じることが求められよう。

18歳、19歳の新たな「大人」が、希望を持って社会参画の一歩を踏み出せるように、私たち、古い「大人」は何ができるだろうか。うれしい悩みと捉えたい。

あなたへのお薦め

 
特集