(円卓)王道のふるさと学習を

福岡教育大学教授 石丸 哲史

近年、多くの地がふるさと学習に本腰を入れている。郷土に内在する「ひと・こと・もの」の価値を再認識させることによって地域への理解を深めさせ、地域への愛着と誇りを抱かせるシナリオである。

このような動きとともに「地元学」の台頭には目を見張る。

ただ、「地元学」を展開したふるさと学習の中には、いささか気になるものもある。愛着や誇りへ子供を向かわせる手続きに拙速さが見られ、これが災いして子供の姿が「好いた・ほれた」の次元から脱しえないことである。地元の歴史を深掘りするがあまり、過去に埋没させてしまい未来を志向しづらくなっているものもある。また、学習の到達点が地域完結であり、他地域と比較した地元の優位性を客観的に認識させずに終わっている。

ふるさと学習に必要なことはゴールをどこに設定するかである。小中9年間を見通したふるさと学習には、最終学年で地域の課題と解決方法を生徒に提示させる試みもある。
北海道浦幌町では、「子どもの想い実現事業」として「子どもたちの夢がつまったまちへの提案や企画を大人たちの手で実現します」(うらほろスタイル推進地域協議会資料より)と宣言し、地域創生に向けた生徒の真摯(しんし)な提案を地域が受け止めている。その前提として地域への愛着を育む事業を位置付けている。

北海道には、人口減少、高齢化、高校の閉校、地場産業の衰退など、深刻な事態に陥っている地域が多い。持続可能な社会の創り手がなんとしても地元に必要なのである。

したがって、今日のふるさと学習には、かつての郷土教育とは一線を画した手法が求められる。持続可能性の追求をゴールとし、着実な地域理解から始めること。これがふるさと学習の王道と言える。

愛着や誇りはその過程で獲得されるものであり、この手順を踏めば持続可能な地域づくりの原動力となる。

学習者は、過去にさかのぼっても必ず現在に戻り地元の未来を望む。比較のために他地域の特長を見いだしても必ず地元に視線を戻す。

現代社会においては、全ての子供が一生地元で過ごすことは現実的には難しい。だからこそ、ふるさと学習から得られる「生きて働く知識・技能」の明確化が今必要とされる。