(円卓)プログラミング的思考だけでよいか

静岡大学教育学部准教授 塩田 真吾

小学校でのプログラミング教育の必修化に伴い、各地でプログラミング教育の実践が行われています。実践では、問題を解決する手順を考え、それをロボットにプログラムするという授業が多く見られます。

こうしたプログラミング教育は、AI時代の不確定な未来に向けて、「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」で議論されました。

有識者会議では、「情報技術を手段として使いこなしながら、論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造する」ことが記されており、 そのためには、いわゆる「プログラミング的思考」が重要であるとされています。

しかし、これからのAI時代にプログラミング的思考を育てるだけでよいのでしょうか。例えば、「テーブルの右端から左端に水の入ったコップを動かさなければならない」という問題があった場合、子供たちは、「右端から左端にコップを少しずつ動かす」という問題解決方法を考え、それをプログラムするでしょう。

実際の問題解決では、「なぜ」を問うはずです。「なぜ、右端から左端に水の入ったコップを動かさないといけないのか」と問うことで、「右手を骨折してしまったから、左手で薬を飲みたい」という「本当の問題」にたどり着けます。こうなれば、「左端に新しいコップを置く」「テーブル自体を動かす」「水なしで飲める薬を渡す」という解決方法もあるかもしれません。

問題解決で一番重要なのは、「問題を解決できる課題を設定する力」(課題設定力)です。逆に、課題を設定できれば、あとはプログラミングで解決してもよいですし、別の方法で解決してもよいはずです。

決められた問題をどう解決するかは、むしろAIが得意とする分野です。もちろんそれらを含んでのプログラミング的思考ということなのでしょうが、もっと明確にAIができない力(課題設定力)を育てていくことの方が重要ではないでしょうか。

われわれが「AI時代の問題」の解決に向けて一歩ずつ進んでいる間に、世界では「AI時代の本当の問題」の解決に向けた取り組みがなされているのではないか、と思うのは杞憂(きゆう)でしょうか。

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