(円卓)希望のギャップをなくすために

NPO法人キッズドア理事長 渡辺 由美子

NPO法人キッズドアでは、低所得家庭の子供たちに無料の学習支援をしている。昨年秋から1年間かけて、学習会に参加する中学生とその保護者を対象に教育格差の原因究明のための調査をした。その中で特に気になったのは希望する最終学歴を親子それぞれに聞いた質問だ。

親は「高校まで」という回答が最も多く、約4割が「高校を出たら働いてほしい」と考えていた。それに対して「高校まで」と答えた生徒は約2割しかおらず「大学まで」が4割弱と最多だ。親子間の「希望のギャップ」がはっきりと現れた。

親の所得と高校卒業後の進路に強い相関があることは以前から分かっていた。親の所得が高いと大学進学率が上がり就職率は下がる。逆に低所得だと大学進学率は下がり就職率が上がる。この現象は、教育格差の文脈の中で「低所得の子供は低学力だから大学進学率が低い」と見過ごされてきた。

しかし、私たちの調査からは、「就職してほしい」という親の希望をおもんぱかって大学進学を諦める子供たちの姿が浮かび上がる。

実際、学習会に通う高校生に進路を聞いても、まだ決まっていないという子が多い。高校を出て働くと意思を固めている子は少ない。「高校を出て働きたいわけではないけれど、成績もあまり良くないし、大学に行きたいなんて親に言えない」。そんな心の声が手に取るように分かる。

国は今、給付型奨学金の導入拡充を進めている。就職氷河期は終わり、大卒の就職率は高水準を維持している。少子化が進む日本では当面この傾向は変わらないだろう。大学を出ても就職できないという心配は不要である。

今年、私たちが無料学習会に通う親子に向けて教育資金セミナーを開催したところ、たくさんの家庭が参加してくれた。

終了後、「うちは大学は無理だと思っていたけれど、いろいろ制度があることが分かったので、子供が行きたいのなら応援したい」と晴れ晴れとした顔でお母さんが言ってくれた。それを聞く子供のうれしそうな顔を想像して見てほしい。

親を思う気持ちが、子供の夢をかなえるブレーキになるような社会ではあってはならない。「好きな道に進んでいいよ」と全ての親が言えるような社会をつくっていきたい。

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