(円卓)情報教育の充実を図る

電気通信大学教授 久野 靖

現在、AIおよびデータサイエンス教育の必要性が叫ばれている。大学、高校の教育において、慌ただしく多くの手段が講じられようとしている。

しかし元来、これらの内容は情報教育と関連が深いものである。そして2022年度からは全ての高校生が学ぶ「情報I」に、プログラミングの内容が初めて全員必須の形で含まれるようになった。また選択科目「情報Ⅱ」では、情報とデータサイエンスの内容が含まれている。

AIという言葉は、直接学習指導要領には出てこない。だが、現在注目されている機械学習、深層学習などの技術は、多数のデータから知識を取り出し、その知識をプログラムの形で利用可能にすることであり、「情報I」「情報Ⅱ」の内容が土台になる。

わが国で「情報」という教科が新設されたのは03年からである。現在までに情報教育は質・量共に増強され、3年後からは上記の内容となる。そのため、本来なら高校の内容を慌てて拡充する必要はないはずだが……。

実際、初等中等教育の現場において「情報」は「遅れて来た邪魔者」扱いである。

高校でも本来は情報免許を持つ教員が教えなければならないのだが、他教科の教員に臨時免許を与えて担当させる道府県が多数ある(そのため情報免許での採用そのものがなかったりする)。

なぜそうなるのかというと、結局は「大学入試に出ない」からである。

情報処理学会は「情報」ができた当初から、大学入試センター試験への「情報」の出題を繰り返し訴えて来たが、なかなか実現しなかった。また、各大学の個別試験でも、受験者数が見込めない「情報」を出題する大学は少ない。

それがようやく最近変化が見えてきた。センター試験が衣替えして新たに始まる「大学入学共通テスト」では、24年度から新学習指導要領に従った実施に移行するのに伴い、「情報」が含まれる見込みである。

こうして見ると、AIなどのために新たな教育内容や制度を考えるよりも、既に存在している情報教育を充実させること、具体的には多くの大学で入試において「情報」を必須とし、また多くの道府県で「情報」の免許を持つ教員を充実させることが、わが国の今後のために早道なのではないだろうか。