「未来の先生展2018」 これからの公民科の授業づくり

大畑方人 東京都立高島高校教諭

「さて、あなたはどう考えますか」――。東京都立高島高校、大畑方人教諭の「現代社会」の授業は、ほとんどがアクティブ・ラーニング(AL)で展開される。取材日はオウム真理教幹部に死刑が執行されたニュース映像を手始めに、死刑制度に関するデータや見方に触れた後、死刑制度の是非をグループで話し合った。日本の世論では8割が死刑制度を支持しているが、クラス内は賛成派と廃止派がほぼ拮抗(きっこう)。生徒はディスカッションを踏まえ、小論文に自分の考えをまとめていった。「未来の先生展2018」では、大畑教諭は「憲法改正」をテーマにするという。


■授業づくりの「三つのC」
――授業づくりで意識していることは。

授業では自分でプリントを用意している。2単位の授業だと、年間で50枚ぐらいの量になる。プリント以外にも、ニュース番組や新聞記事もよく使っている。

授業づくりをする上で、特に大切にしているは「三つのC」だ。一つ目のCは「キャッチー(Catchy)」。資料集めでは、できるだけリアルな教材を集める。授業もALにすることで、生徒の意欲を高めるようにしている。

二つ目のCは「カジュアル(Casual)」。生徒に身近な問題から入り、自分自身はどう思うかという視点を重視している。例えば政治分野を扱う場合は、生徒を起点に、学校や家庭から始めて、その次に地域社会、さらに国、最後にグローバル社会と同心円状に広げていくようにしている。

学校をテーマにした政治では、ブラック部活動やブラック校則を扱った。人権とは何かということに目を向けさせたり、民主主義、民主的な物事の決め方を考える題材にしたりしている。いきなり国会や内閣、裁判所と始めてしまうと、生徒はどうしても人ごとで遠い存在だと思ってしまうので、普段着の言葉で語れるようなテーマ設定をとても意識している。

授業準備は家で早朝にやるという大畑方人教諭

三つ目のCは「クール(Cool)」、すなわち格好よさだ。社会問題について、しっかり自分の意見を持ち、それを表現できる力を持っている人を「かっこいい」と思ってもらいたい。

そこで積極的に取り入れているのが、外部人材に協力を仰ぐことだ。特に生徒と年齢の近い大学生や若い社会人に出前授業をしてもらうことが多い。年間の1割くらいを出前授業でやることもある。生徒たちにとってロールモデルとなるような魅力的な大人と交流することで「社会に関心を持って何か行動している人になりたい」と思ってもらいたい。

――ほぼ全ての授業をALにしている理由は。

私も3年前までは、丁寧に板書をして、ノートに書かせる「チョークアンドトーク」の授業をしていた。それを止めようと思ったのは、そういう旧来型授業では、生徒は勉強している気になっているが、頭の中はアクティブになっていないと思ったからだ。自分が公民科の教員を志したきっかけとなった高校時代の恩師の授業こそ、ディベートや小論文、時事問題スピーチを毎時間やるようなスタイルだった。その授業にどうやって近づけるかを考えた結果、全ての授業がALになった。

失敗したと思う時もある。ディスカッションが表面的に終わってしまう時がそうだ。死刑制度の是非をディスカッションしても、一人ずつ自分の意見を言うだけで終わってしまうと、それは結局深い学びにはならない。だから、資料を準備して事前に知識を得た上で、なおかつ他者と意見交換するというプロセスを経て、初めて深い理解になっていくと思う。

新学習指導要領の「公共」では、活動を通して知識を得ていく学びが重視されている。しかし、体験ありきで終わってしまわないか懸念している。公民科ならではの探究活動として、地域と連携して、地域の課題を高校生が把握し、解決策を提示して行動していくような活動をしていきたい。そうすれば、生徒の自己有用感や社会への参画意識も高まるはずだ。

取材日の授業では「死刑制度の是非」を取り上げた
――「未来の先生展2018」での発表テーマは。

昨年は模擬選挙の取り組みを報告するとともに、「参加のはしご」という教材を紹介し、参加者にも体験してもらった。今年は「憲法改正、その前に。」というタイトルで、授業で憲法を取り上げる際のアプローチを考えたい。憲法改正が現実の政治課題となっているが、憲法を改正するとなれば、国民投票という形で関わることになる。しかし、そもそも私たちは「憲法とは何か」「憲法の役割」について意外と知らない。私の実際の授業を「未来の先生展」で参加者に体験してもらおうと思っている。ぜひ、主権者教育、法教育に取り組みたいけど、ためらってしまっている教師や教員志望の学生たちに来ていただきたい。


【プログラム名】「憲法改正、その前に。 ~アクティブ・ラーニングで学ぶ立憲主義~」(15日午後2時15分~3時45分)