熱中症の注意喚起 教育関係者への期待

初等中等教育局健康教育・食育課 中村徹平課長補佐に聞く

 

独立行政法人日本スポーツ振興センターが行う災害共済給付の支給状況を見ると、平成25年度から27年度の学校管理下における熱中症に伴う医療費の支給は、平成25年度の約5200件から平成26年度には約4200件と1000件近く給付件数が減少しているものの、平成27年度には約4400件とやや増加しています。熱中症に起因する死亡事故も依然として毎年発生しています。

熱中症は適切な措置を講ずれば十分防ぐことが可能ですので、単純な件数の増減というよりも、防げるはずのものが防げていないという事実を、関係者は重く受け止める必要があると思います。

文部科学省では毎年、熱中症事故の注意喚起を促す通知や事務連絡を各学校の設置者、都道府県担当課あてに発出していますが、活動前後の水分や塩分の適切な補給、熱中症の疑いのある症状が見られた場合の早期の措置など、基本的な対策を着実に実践することが最も効果的です。

教員や指導者においては、熱中症が起こりうる状況を適切に認識し対策を講じるとともに、児童生徒の体調に気を配るのはもちろんのこと、児童生徒が不調を感じた場合にはその事実を申告しやすい環境を作っていくことが重要です。言うまでもなく児童生徒には体格や体力の差があり、同じ個人でも日によって体調が異なります。

5月や6月であっても、急に気温が上がる日もありますし、過去には問題が生じなかったからといって、今回も問題が生じないとは限りません。児童生徒が自らの不調を言い出しにくい環境になっていないか、また、体調不良を我慢させるような状況を作り出していないか、ということに常に気を付けていただきたいと思います。

学校管理下における熱中症の予防に関しては、平成25年に独立行政法人日本スポーツ振興センターが作成した「体育活動における熱中症予防調査研究報告書」に、大変参考になるデータや知見が掲載されています。

この報告書によると、学校管理下での熱中症死亡事故は、その92%が部活動を含む体育活動中に発生しています。また、熱中症死亡事故の学校種別の割合では、高等学校が68・8%と最も高く、次いで中学校が26・2%、小学校は2・5%となっています。体育活動中や高校生での割合が高くなることは予想できると思いますが、体育以外の活動や小・中学生であっても、死亡事故が十分起こりうるということに注意が必要です。

さらに、同報告書では、体育活動中の熱中症の発生要因として、(1)個体(体調不良、肥満等)の要因(2)方法(運動強度、運動量等)の要因(3)環境(気温、湿度等)の要因(4)指導・管理(スポーツの指導方法等)の要因などを挙げています。活動の計画段階から、これらの観点を踏まえた対策をとることが求められます。

冒頭で述べたとおり、熱中症は水分や塩分の補給ができる環境を整え、活動中や終了後にも適宜補給を行うこと等の適切な措置を講ずれば十分防ぐことが可能であり、もし疑いのある症状が見られた場合でも、早期に水分・塩分補給、体温の冷却、病院への搬送等の適切な処置を行うことで重症化を防ぐことができます。つまり、偶発的な要素の強い他の事故と比べ、監督者の管理・指導、環境整備といった責任が強く問われる事故であるといえます。

残念ながら、けがを押して競技大会に出場したり、脱水症状等を起こしても競技を続けて勝利を目指したりする競技者を讃える風潮が未だ一部にあると感じます。しかし、そうした状況で運動を続けることは、単なる危険行為であることを認識しなければなりません。こうした認識を関係者間で共有することも、熱中症対策の前提として重要なものであると考えます。

なお、熱中症に限らず、学校管理下における事故の防止という観点からは、未然防止や事故発生時の対応だけでなく、不幸にして発生してしまった事故を検証し、どう再発防止につなげていくかという視点も重要です。

文部科学省は、昨年度末に「学校事故対応に関する指針」を取りまとめました。これは、未然防止から再発防止策まで、学校管理下における重大事故に関して学校関係者がとるべき措置について一定の方向性を示したものです。この学校管理下の事故には、当然熱中症も含みます。学校関係者には、本指針に沿った運用をお願いするとともに、防げるはずの事故が防げなかったという事態が起こらないよう対策に万全を期していただきたいと思います。

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