【インタビュー】第4次産業革命で人材育成 首長主導でICT化推進を

磯寿生 文科省情報教育課長に聞く

政府は「第4次産業革命」に対応するべくIoT(モノのインターネット)や人工知能を活用する方針を掲げ、それに向けた体系的な人材育成を打ち出した。これに合わせて文部科学省は5月に、「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」において、学習指導要領の改訂に向けて、小学校段階における資質・能力の育成と効果的なプログラミング教育の在り方等について検討を始めた。こうしたなか、同省生涯学習政策局の磯寿生情報教育課長に、教育の情報化の現状や今後の動向について聞いた――。

pf20160530_01_01
資料提供・文部科学省

――学校のICT環境整備の現状は。

各自治体では年々、教育現場のICT化は進んでいるが、地域間格差が広がっている状況だ。例えば、タブレットPCを含む教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数をみると、全国平均(平成27年3月1日現在)は6.4人。「第二期教育振興基本計画」では、平成29年度までに1台当たり3.6人の目標を掲げており、佐賀県が都道府県レベルで2.6人と、初めて目標値を上回った。こうした突出した自治体があるなか、愛知県では8.4人と格差は広がっている。

特に市レベルでみると差が顕著となっている。岡山県備前市は1台当たりの児童生徒数が0.7人と圧倒的に高いが、香川県善通寺市は21.5人と、格差が鮮明だ。

学校のICT環境整備は地方財政措置によって進められているので、首長がどれだけICT教育に意識をもっているかで整備率の進捗が変わってくる。文部科学省が首長に向けて、ICTの重要性を訴えていかなければならないと考えている。

――「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」の中間とりまとめを受け、文部科学省は「教育の情報化加速化プラン」の骨子を示しました。

同プランは、教育の情報化の加速化に向けた施策をパッケージ化したもの。官民が連携して教材開発を推進するコンソーシアムの構築や、児童生徒の1人1台の教育用コンピュータ環境と、校務支援システムを連携させた学級・学校経営改善支援モデルである「スマートスクール構想」の実証などが盛り込まれている。同懇談会の最終報告の取りまとめを受け、7月末には同プランを公表する予定である。

――教員の多忙化解消に向けたICT活用の現状は。

先ほど述べた「教育の情報化加速化プラン」には統合型校務支援システムの普及・促進も盛り込まれている。先進的な事例として北海道教育委員会の取り組みがある。札幌市教育委員会を除いた市町村教育委員会がクラウドサービスで運用している。統合型校務支援システムには、学籍管理や通知作成機能、出席管理などの機能が搭載されており、多くの事務作業が効率化されていると聞いている。

鳴門教育大学大学院の藤村裕一准教授の調査によれば、政令指定都市や中核都市、都内23区の52%が校務支援システムを導入しているが、市では24%、町村では8%と小規模自治体は導入が遅れている状況となっている。同プランに基づき、自治体の現状に応じた整備モデルを示し、全国の教育委員会に向けて校務支援システムの有用性等について説明していきたいと思っている。

――ICTを活用したアクティブ・ラーニングの実践に向けては。

機器の問題もあるが、ICT機器を整備するだけでは授業改善にはつながらない。ICT機器をどのように活用するかが重要な課題である。アクティブ・ラーニングを実践するためには、動画や音声、データの蓄積などのICTの特性を生かした、効果的な活用が重要である。

具体的には「問題の発見」から始まり「問題の定義・解決の方向性の決定」「解決方法の提案、計画の立案」「結果の予測、計画の実行」「振り返り」「次の問題解決へ」といった学習のプロセスの中での効果的な活用が重要である。

資料提供・文部科学省
資料提供・文部科学省

今年度の新規事業である「情報教育推進校(IE-School)」では、カリキュラム・マネジメントを踏まえた教科横断的な情報活用能力の育成に関する指導モデルを構築するのが目的だ。これに基づき、プログラミング教育や情報セキュリティなどの指導方法・教材の利活用について実践的な研究を実施する。小・中・高校各5校を実証校とし公募で選定する予定だ。

この実証結果を、次期学習指導要領解説書および教育の情報化の手引に反映させることを考えている。さらに「教育ICT活用実践事例集」や「『ICT活用ステップアップ映像集』利用ガイド」といった実践事例集についても、実証の成果を踏まえさらに充実していく予定である。

さらに政府において、「第4次産業革命」に対応するべく体系的な人材育成を打ち出し、文部科学省においても「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」を設置し、32年度から順次実施予定の学習指導要領の改訂に関する中教審での議論に引き継ぐとしている。

特集