デジタル教科書で数式を可視化【東京都荒川区第三中学校】

デジタル教科書を活用した因数分解の学習を行う
デジタル教科書を活用した因数分解の学習を行う

答えがない式で理解深める

東京都荒川区教委は「未来を拓き、たくましく生きる子どもを育成する」との教育目標を掲げ、「子育て教育都市荒川区」を実現する学校教育ビジョンを策定している。総務省の「先導的教育システム実証事業」と文科省の「先導的な教育体制構築事業」の実証地域にも指定されている。

平成17年度に、区教委と全教員と全普通教室をつなぐ「あらかわ教育ネットワーク(Aen)」を敷設。22年度には小・中学校全普通教室に電子黒板を導入したほか、その2年後には「デジタル教科書」のネットワーク配信を開始した。26年度には同区内の全小・中学校34校(中学校10校、小学校24校)に、1人1台のタブレット端末を配備した。

■面積図を活用

同区立第三中学校(清水隆彦校長、生徒数413人)でもICTを活用した授業を展開。東京都が今年度から開始した習熟度別指導(基礎・標準・発展)にも取り組んでいる。

同校で数学科を担当している西川慶介教諭は、デジタル教科書(東京書籍)を活用し、3年生の発展クラスで因数分解を学習。長方形の面積を縦と横の長さの積で表すと式の展開の逆と見なせるので、この考えを利用して、与式の多項式を面積図で可視化し、因数の積で表すと因数分解できると理解するのを学習のねらいとした。

そこで、「3種類の面積ブロックを使い、χ2(2乗)+3χ+2を面積と考えて、長方形をつくってみましょう。このときの縦と横の長さはどんな式で表せるでしょうか」と発問した。

生徒らは、タブレット端末で面積ブロックを動かしながら、χ2(2乗)はχ×χ、1は1×1で、両方が正方形になっているのを理解した。χは1×χなので1辺がそれぞれ1とχの長方形になっていると導き出した。同教諭はさらに、「多項式χ2(2乗)+5χ+5の面積図で、長方形の長さを利用して縦と横の長さを求めてみよう」と促す。だが、この式では長方形ができないようになっている。

生徒一人ひとりがタブレット端末を使い考えをめぐらせた
生徒一人ひとりがタブレット端末を使い考えをめぐらせた

■タブレットで理解

生徒らは、再びタブレット端末でブロックを動かし「長方形ができません」と即座に反応する。生徒の1人は、χ2(2乗)の正方形が1個、1の正方形が5個、χの長方形が5個として、組み合わせても1の正方形が1個足りず、長方形にならないと説明した。

「χ2(2乗)+5χ+△にした場合として面積図を利用して長方形の縦と横の長さはどうなるでしょうか。そして△にどんな数字が入るでしょうか」と発問。すると生徒らは「6」「4」と次々と答えた。△に6を入れた場合の因数分解はどうなるかと促すと、χ2(2乗)+5χ+6=(χ+2)(χ+3)と導き出した。

■西川教諭の話

授業後、同教諭に、ICTの教育利用などについて聞くと――。

板書のスタイルは変わりつつある。以前は、教科書に沿った流れで板書をしており、生徒が黒板の前に出て書いたりするものだった。だが、タブレット端末と電子黒板が導入されてから、授業の効率化や改善が図られ、生徒が自分たちの机で考える時間が増えた。

数学というと、計算をして答えを求められていると考えられがちだが、それだけではない。答えに至るまでの考える過程やまとめる力が重要である。本時のポイントは、答えが出ない式を示し、これに対して生徒たちがどのように対応し、発想の転換ができるのかを見ようとした。生徒たちはタブレット端末をうまく活用し、ブロックを動かしながら、いろいろと考えをめぐらせていった。

こうして操作的で視覚的に思考を進めながら、次第に因数分解の本質を理解していった。その道具立てとして、デジタル教科書やタブレット端末は、大いに役立っている。

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