BYODでICT活用 情報アクセスの多様性がカギ

国研教育研究情報センター総括研究官 福本徹

 

「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会」報告書(中間まとめ)では、「個々の能力・特性に応じた学びの実現」などを目指すべきだとし、次期学習指導要領に向けた改訂議論でも、これらの要点が基盤とされている。また21世紀型スキル等で述べられている新しい学びのゴールの最も顕著な特徴は、これまでエリートの到達目標として挙げられていたスキルが、これからは世界の全ての教室で、生きて働く全ての人にとって獲得可能でなくてはならないスキルとして宣言されているのである。

道具は、目的のために使えてこそ意味がある。ICTが道具であるからには、いつでも使えるような気軽な活用が求められる。いつもの機器を学校での学習にもプライベートでも使う、手になじませるように使い続けることが重要である。個人あるいは家庭で持っているICT機器を学習に使うのは、むしろ必然である。個人のICT機器を学校に持ち込んで学習に使うのは、ごく自然な流れであろう。すなわちBYOD(Bring Your Own Device)である。ICT機器を一斉教授に用いるだけではなく、「学習者中心のICT活用」という考え方も提唱されている。

インクルーシブ教育システムという視点からも、ICT機器を使うことでの学習の保障が必須である。学校内で自身のICT機器を必要に応じて使うのは、「特定の子だけがタブレット端末でノートを取ったり板書を撮影したりするなどを、校長や教育委員会が許可する」にはならない。

このような学習活動を推進するのであれば、例えば「児童生徒が学習する内容についてスマートフォンを用いて検索しているが、授業中にスマホで手遊びしているように教師からは見える」という状況を、教師が認容できるかどうかである。

こうした状況は、一見すると授業に参加していない(教師による教授を児童生徒が聴いてない)ように見えるが、実際には授業に参加しているのである。もちろん「教師の発問などを聞きつつ検索する」という行為には、高い認知能力が必要である。こうした行為が学習規律を乱したり、学習内容の理解を妨げたりしないことが前提である。似たような事例としては、千葉県市川市の小学校では担任の裁量で、児童が学習中に学校図書館に行き、必要な図書を探すことができる。

そのカギが「多様性」にある。一人ひとりが情報にアクセスし、編集し、自分の考えとして表現でき、他人の考えを統合する形で使えると、活用可能な知識が身に付くのである。こうした過程でのICT機器をはじめとしたツールの使い方が、将来の生活や学習にも役に立つ。

学校での学習においてICT機器を活用するとして、学校にインターネット接続環境を準備するかどうかという問題が出てくる。多くの自治体や学校では、無線LAN環境を整備してインターネット接続を行っているが、茨城県古河市をはじめとして、学校から公衆回線(LTE環境)を利用した接続が進められている例もある。学校に無線LAN環境を整備するのであれば、フィンランのドエスポー市のように、公共図書館や公民館、駅などでシームレスに使えるようになれば、自分のICT機器・同じ環境で学校でも図書館でも学習が可能になる。これは生涯学習の観点からも有益であろう。

最後に、ICT環境整備については、国による環境整備4か年計画では、地方交付税措置であるために、自治体の裁量に任されているが、既に差が出始めている。ICT環境を使いこなせるか否かが将来の職業選択に影響するだけの話ではない。ICTリテラシーは「生きて働く全ての人にとって獲得可能でなくてはならないスキル」であるという認識を持っていることが重要である。

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