「海洋産業」の担い手 人材育成のために必要な教育の役割

海洋教育の充実求める
体験型教育の必要性も

対談

日本の国土面積は世界61位であるにもかかわらず、排他的経済水域(EEZ)は世界6位を誇っている。日本の周りは海に囲まれており、海洋人材の育成は欠かせない。平成19年に成立した海洋基本法には、国民に対する海洋教育の実施が必要であると明記されている。「海の日」を前に、馳浩文科相と海洋立国懇話会の宮原耕治会長(日本郵船(株)相談役)に「海と教育」をテーマに海洋人材の育成などについて対談してもらった(日本海事新聞と教育新聞が共同で実施)。

宮原耕治 海洋立国懇話会会長
宮原耕治 海洋立国懇話会会長

宮原 日本は資源が少ない国ではありますが、これだけの経済大国になれたのは、海外から多くの原材料を輸入し、それを加工し輸出してきたからです。こうした産業を支えているのは、造船や海事、水産業などです。海洋資源開発の側面からみると、文科省の所管であるJAMSTEC(海洋研究開発機構)が海底資源の研究開発をしています。この分野は日本の成長産業の一つだと確信しています。

今後、海洋産業を誰が担うのか、非常に重要な課題です。そのため、次世代の子どもたちに、海と自分たちの生活、経済との関わりをしっかり理解してもらいたいと思っています。

昨年の「海の日」に開かれた「海の日」特別行事の開会式には、安倍首相が来てくれました。そこで安倍首相は、海洋人材の育成に向けた思いを語っていました。

現在の教科書では、「日本は島国である。あらゆるエネルギーの大半を輸入して暮らしています」という記述はあります。次期学習指導要領では、それに加えて、海や環境を守ることの大切さを学習する記述を盛り込んでほしいです。海に対する理解や海洋産業の将来に対する関心を、もっともたせるような内容にしてほしいと願っています。

馳浩 文部科学大臣
馳浩 文部科学大臣

 宮原さんのご意見は承知しています。一番大事なのは「国境の確定」です。現在、領土、領海、領空の確定がどのような歴史的経緯によってなされているのか。そして、それが近隣諸国との間にどういう影響を及ぼしているか。その上で、国益を守ることの重要性は国民の素養として基本中の基本だと考えています。そういう観点から領海の確定、その経緯、近隣諸国との関係を学習する必要があります。地理歴史の分野で、これを学ばずして国民としての基礎的な理解をしたとはいえません。学習指導要領では、小学校、中学校、高校と発達段階に応じてこれらのことが正確に理解できる内容でなければなりません。

さらに海に関わる人材を育成するには、海に興味・関心をもってもらう必要があります。義務教育段階に加え、高校の進学先を選ぶ際には、海に関する学習内容や職業について「これをやってみたい」「不思議だな」「なるほど」など積極的な気持ちをもってもらえるような中身であってほしいと思っています。

宮原 EEZの広さは、世界で6位です。その海底には資源、エネルギーがあり、海中には豊富な水産資源があります。だが、海洋産業は縮小気味です。これを盛り立てるには、人材育成が欠かせません。そのためには子どもたちの海への興味・関心を育てることが大切です。海に関する場所に身を投じて勉強し、そういう仕事に就きたいと思わせられるかどうかが、今後のカギとなります。

海に興味・関心を持ち続けて勉強すれば海に関わるやりがいのある仕事ができるという海の学びのサイクルを、人材を受け入れるわれわれ民間企業も、その輪に入って構築しなければならいと考えています。文科省には、その根本である小学校、中学校の教育において、海に関する教育内容の充実を図るような方針を示してほしいと念願しています。

 海洋人材の育成には、「青年の船」などの体験型の事業がベストと考えます。こうした事業で子どもたちが航海をしたり、実践的な造船所を見学したりするのもいいでしょう。あるいは、環境省と連携して環境保全型の教育などを提供するのも必要です。その仕事に従事して海のことをさらに理解していこうとする気持ちを育成することが究極の目標でしょう。

海洋事業を通じて他国の人々と交流するのも大きな役割だといえます。今や、わが国の船員の半数以上が外国籍の人々です。したがって、そういう人々との交流により、国籍を超えて、海を皆で守っているのだという事実の理解も必要です。

宮原 今年の「海の日」には、各種の船を数隻用意して乗船できるようなイベントを開く予定です。海上保安庁はじめ、私たち日本郵船の船もあります。これは昨年から始めて、なかなか好評です。東京だけでなく全国展開もできたらと考えています。

 大変よい取り組みです。都道府県にある船舶協会を中心に、子どもたちに小型船舶、プレジャーボートなどに乗船させるのも、よい体験となるでしょう。そこで海の楽しさだけでなく、怖さを理解させるのも大切です。さらには教員の役割も重要です。海に関する興味・関心を子どもたちにもってもらうには、教員にもマリンスポーツなどをぜひ体験してもらいたい。体験談やこのときに撮ってきた映像、写真を授業でも活用してほしいですね。そういう意味では、教員にできるだけ夏休暇をとらせてあげたい。