歯の健康と生活習慣を見直す学校プログラム「楽しく学ぼう! 歯の健康づくり講座」が9月19日、埼玉県蓮田市立黒浜小学校(飯野正章校長)で行われた。この講座は(公財)日本学校保健会が企画・監修/共催し、(株)ロッテの協力のもと実施された。同校の4年生59人が約45分の講座を受け、給食後の体験学習も含めてむし歯予防の重要性を学んだ。
講師は、(一社)日本歯科医療管理学会の尾崎哲則理事長が務め、「むし歯のできるメカニズムを知る」「むし歯の予防法を知る」を学習目標に講義を行った。動画や実習を交えて楽しみながら学べるプログラムで、児童たちは始めから終わりまで興味を持って耳を傾けていた。
講座は「むし歯ってなに?」を勉強するところからスタートした。
まず「歯は、歯茎から出ている部分が見えていますが、その下には根っこがあって、歯の外側は固いエナメル質に覆われています。その下に象牙質、さらに歯の神経といわれる歯髄(しずい)があります」と説明。その上で、「むし歯ってどうしてできるの?」という動画を視聴し、むし歯の進行プロセスについて次のように解説した。
「動画に登場したのは、歯、むし歯菌(ミュータンス菌)、食べ物(お砂糖)、歯垢(しこう)、酸の5つでしたね。歯、むし歯菌、食べ物(お砂糖)の3つが別々にある状態ではむし歯になりません」
「むし歯菌は口の中にいて、お砂糖を食べてどんどん仲間を増やしていって、スクラムを組んで歯垢を作ります。さらに、酸が出てきます。酸は歯を溶かしてしまうので、それがむし歯になります」
「口の中に歯、むし歯菌、お砂糖があって、これらがくっついて酸ができて歯を溶かしたのがむし歯です。むし歯は『歯、むし歯菌、お砂糖が重なったときにできる』と発見したのがアメリカのカイスという人であることから、この3つが重なる輪を〝カイスの輪〟と呼んでいます」
続いて、「3つの輪が重ならないようにするにはどうしたらよいでしょう」と投げ掛ける尾崎先生。すぐに手が上がり、「歯みがきをする」と即答する児童。
さらに「むし歯菌と食べ物がくっつくと酸ができ、酸が歯を攻撃します。歯の表面を攻撃する酸から歯を守るために、歯の表面を強くするにはどんなことをしたらいいかな」と尋ねると、「フッ素を使う」とこちらもすぐに正解が出た。
「今、日本で売られている子ども用歯みがきの9割以上、大人用でも8割以上のものにフッ素(※)が入っています。フッ素の入った歯みがき粉を使うとむし歯予防になります」と伝えた。
次に、映像を交えてキシリトールの効果について学ぶ。「お砂糖とむし歯菌が一緒になると歯垢や酸が作られますが、お砂糖と同じような甘さがあるのに歯垢や酸を作る材料にならないものがあります、それがキシリトールです」と説明。
「でも、どんな食べ物にもキシリトールが入っているわけではありませんね。おいしい食事を作るためにお砂糖は必要なので、むし歯菌や食べ物が歯にくっつかないようにするためには歯みがきが大切です」
一方で、「歯みがきをしてもみがき残しがある人もいれば、歯みがきをしていなくても汚れがとれている人もいます。実は、歯にはよく噛んで食べることで汚れが取れるところ、しっかり歯みがきをすることできれいになるところ、歯みがきをしても汚れが取れないところがあります」
「むし歯予防のためには、早起きをして朝ごはんをよく噛んで食べて、食後に時間をかけて歯みがきをすることが大切です。早寝・早起きをしましょう」と説いた。
実際に「よく噛む」ことを体験するため、講座は赤と青の2色ガムを60回噛む実習へと移った。尾崎先生の合図で噛み始め、「1、2、3」のカウントに合わせて60まで噛み続ける。よく噛んで2色が混ざり合うと紫色に、よく噛んでいないと赤と青のまだら模様になる。
児童らは、自分の噛んだガムの色、混ざり具合をチェックすると同時に、よく噛むことで唾液がたくさん出ることも確認。「よく噛むことは歯・口の健康の秘訣」であることを学んだ。
講座は、歯の健康と生活習慣を見直すまとめへと進んだ。
「食事をすると、必ずむし歯菌と食べ物は出会ってしまいます。むし歯菌と食べ物が何回も出会わないようにするには、規則正しい生活習慣を身に付けることが大事で、それは健康な体につながっていきます」と伝授。また、歯みがきだけでは完全にきれいにできないところがあるので、定期的に歯医者さんへ行く必要性も伝えた。
その上で、むし歯から歯を守るためのポイントとして、「歯をみがく」「フッ素入りの歯みがき剤を使う」「規則正しい生活をする」「よく噛んで食べる」「ダラダラ食べ、ながら食べをしない」「歯医者さんへ定期的に行く」――の6つを確認した。
最後に、キシリトールが生まれたのは自然豊かなフィンランドで、キシリトールの原料は白樺の木であることを伝え、自然環境を大切にすることの大切さも学んだ。
給食後には、咀嚼判定用ガムを使って再度「よく噛む」実習を行った。今度はカウントせず、自分のスピードで60回噛む。最初は緑色のガムが、よく噛んで唾液が混じるとピンクに、さらに噛むと赤へと変化する。
よく噛むと舌や頬が歯の表面をこすり、歯がツルツルしてくることも確認した上で、尾崎先生は最後に「これから食事をするときは、『よく噛めているかな』と考えながら食べてください」と締めくくった。児童らにとって、自身の歯の健康について学ぶ有意義な時間となった。
※フッ素…ここで言うフッ素とはフッ化物のこと。