「現場任せ」の維持・管理から脱却 セキュアで安定的なサーバー環境を学校法人レベルで整備

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 ICT の活用は長年、一部の熱心な現場教員の取り組みによって広がってきた。そうした状況もあり、データなど等の管理が「現場任せ」にされ、それが情報漏洩(ろうえい)や運用管理負担、長時間労働などにつながってきたことも指摘されている。そうした中、計9校もの系列校を擁する埼玉県の学校法人・佐藤栄学園では、教員や児童生徒が安心して ICT を活用できることを目指し、法人全体でサーバー環境の整備を進めている。具体的な取り組みの経緯を聞いた。

学校ごとに異なっていたサーバー・システムの状況

 佐藤栄学園は埼玉県に拠点を置く学校法人で、傘下に9校の系列校を擁し、在校生は約1 万 1 千人、在籍教職員は約 1 千人にも上る。1971 年の設立以来、建学の精神である「人間是宝」に基づく教育を展開し、昨今は自律的に学ぶ人材の育成に向けて ICT の活用にも力を注いできた。系列校のさとえ学園小学校に1人1台端末が整備されたのは 2018 年 7 月と早く、他の系列校も含め現在では多くの授業で ICT が活用されている。

法人本部 総務部 課長 齊藤実氏
法人本部 総務部 課長 齊藤実氏

 このように ICT の活用で他をリードする佐藤栄学園だが、大きな課題はサーバーやシステムの管理が現場任せになっている点であった。法人本部 総務部 課長 齊藤実氏は「本学園は学校法人としては規模が大きいので、他校の方からはよく『ICT センターが設置されているのですか』などと聞かれることがありました。現実には各校の ICT に詳しい教員が個別に対応しているような状況でした。そのため、機器の故障やネットワーク障害が生じると現場の教員がその対応に追われ、本来業務に支障が出ていました」と当時の状況を語る。さとえ学園小学校でカリキュラムマネージャーを務める山中昭岳教諭も「サーバーやシステムの管理は本来、教員の仕事ではありません。そうした作業に時間を取られれば、学園全体としてもマイナスなことなので、現場からも状況を改善してほしいと要望を出していました」と話す。

サーバーをオンプレミスからクラウドに転換

 そうした課題を踏まえ、同学園では系列校 3 校(さとえ学園小学校、栄東中学校、栄東高等学校)のサーバーが 2022 年夏に契約更新を迎えるタイミングで、システムの刷新・統合を進めることとした。そして、系列校の教員も加わる形で 2021 年にプロジェクトをスタートさせ、詳細な仕様について検討を重ねていった。

 そんな中、大きな検討事項の一つはサーバーを現状のままオンプレ形式にするかクラウドにするかであった。最終的にはクラウドに切り替えることとしたが、その経緯について齊藤氏は次のように説明する。

 「学校は多くの個人情報を預かっています。そのため、当初はサーバーを学外に置くことを懸念する声もありました。そこで、ICT基盤を総合的に扱うNTT東日本へ相談し、詳しく説明を受ける中で、セキュリティーやサーバーの安定的性という面でもクラウドを採用するメリットが大きいと考えました。また、心配していたコスト面も 5 年スパンで試算したところ、オンプレ型とほぼ変わりがないことが分かりました」

 授業で活発に ICT を活用するさとえ小学校の山中教諭も「ICT は『いつでも』『どこでも』『誰でも』使えることが大事。その点でも、サーバーをクラウドにすることのメリットは大きいと感じました」と話す。

 2022 年 8月、さとえ学園小学校の全サーバーと栄東中学校・栄東高等学校の一部サーバーのクラウド化が完了し、運用がスタートした。他の系列校についても今後、各校の希望を聞きつつ順次クラウド化を図っていく計画だと齊藤氏は話す。

今後を見据え、クラウドサービスは AWS を選択

 一口に「クラウド」といっても、各社からさまざまなサービスがリリースされている。その中で、佐藤栄学園が選択したのは アマゾン ウェブ サービス(AWS)であった。その理由について、齊藤氏は「日本の大手企業や公的機関も利用している実績があったこと、国内にも耐障害性の高いデータセンターがあり安全性が高そうなことなどが決め手になりました」と説明する。また、学園統合ICT基盤整備の委託業者であるNTT東日本埼玉支店の宮本則子氏は「既設のシステムは、各校で異なる業者が構築・運用という状況と伺いました。実績が多いAWSは構築運用可能な技術者も多いため、オンプレシステムのクラウド化もスムーズに推進できると考えました」と話す。

 クラウド上でサーバーを構築するに当たり、学校法人として最も気を遣ったのは、やはりセキュリティーだったという。「そのため、個人情報を保有するシステムは、AWSの堅牢なクラウド基盤に格納し、学校からはインターネットと分離された『閉域ネットワーク』を通してシステムを利用するセキュアな学園統合ICT基盤を構築してもらいました。その上で業務継続性も確保したので、現場の教員たちが授業に集中できるようになったのではないかと考えています」と齊藤氏は話す。

安心して仕事に臨めるようになった

さとえ学園小学校の山中教諭
さとえ学園小学校の山中教諭

 サーバーをクラウドに切り替えたことで、現場レベルではどのようなメリットがもたらされたのか。さとえ学園小学校の山中教諭は次のように話す。

 「以前は学期末に成績処理を行う際、サーバーへのアクセスが集中して、システムがダウンするようなことが頻繁にありました。でも、クラウドに切り替えて以降は、そうしたこともなくなりました。学期末は教員も何かと慌ただしいので、成績処理をスムーズに進められることのメリットは大きいものがあります」

 サーバーの切り替え後、システム障害は発生していないとのことだが、法人本部の齊藤氏は「今後もし、障害が発生したとしても、AWS が迅速に対応してくれます。5年に 1回のサーバーの更新から解放されたことも含め、現場の教員の負担が減り、授業に集中できるようになりました。何より、皆が安心感をもって仕事ができる点は大きいと思います」と話す。いずれは届け出や報告、決裁などの手続も DX化を図ることで、さらなる業務効率化を図っていく予定だという。

「個別最適な学び」のさらなる推進に向けて

さとえ学園小学校
さとえ学園小学校

 山中教諭がカリキュラムマネージャーを務めるさとえ学園小学校では、日本や世界を牽引するリーダーの育成を目指し、核となる資質として「突破力」の育成を掲げている。そのために、知識・技能の着実な定着を図るとともに、子供が自律的に学ぶ授業への変革を進めている。「一律の宿題のように全員が同じ課題に取り組む学びから、子供が自分の課題を見つけ、主体的に解決していくような学びへの変革を進めています。端末はそのためのツールであり、子供が空気のように活用できるように支援していきたい。そして、教員たちも空気のような存在になって、子供たちの主体的な学びを支えていきたいと考えています」と山中教諭は話す。

 佐藤栄学園では今年度、NTT東日本と最新テクノロジーを用いた次世代教育協創の連携協定を結び、教育 DX の推進を進めている。連携協定の取組み第一弾として、さとえ学園小学校では睡眠の質を可視化するスリープテックを活用した「眠育DX」を今年の10月にスタートさせた。山中教諭は「総合的な学習の時間で取り組んでいます。今後は保護者とも連携しながら、子供たちがデータに基づき個別最適な睡眠を探究する力を育んでいきたい」と話す。

この記事でご紹介した内容を、AWSのオンラインウェビナーでご紹介します。

事例ウェビナー

教育現場におけるICTは空気のような存在でありたい

さとえ学園小学校と佐藤栄学園本部による先進的な取り組み

2023 年 12 月 27 日(水)14:00 - 14:40

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