多くの教員にとって悩ましい課題の一つに、3観点による観点別学習状況の評価への対応がある。現行の学習指導要領では、「知識・技能」の習得によって「知っている・できる」レベルのみならず、概念を理解する「わかる」レベル、さらに実生活・実社会の文脈で活用できる「使える」レベルまで育成することを目指し、新たに「技能・知識」「主体的に学習に取り組む態度」「思考・判断・表現」の3観点で評価を行っている。
主体性をどう評価するのか、また「思考・判断・表現」の評価においては、授業中の発言やノート、グループワークの様子などを丁寧に記録に残すことなどで「評価疲れ」を招く恐れもあり、悩ましいところだ。そんな課題を解決すべく、シンプルな観点別評価を行うための参考書が本書(全体編著/石井英真)である。
日々の授業は生徒を伸ばすための授業に集中し、記録に残す評価・総括的評価は単元末や学期の節目に焦点化・重点化することで、「使える」学力の育成と働き方改革の双方の実現につながる。本書の特長は以下の通り。
評価に関わる負担は、評価するタイミングを厳選して絞り込むことで軽減できる。本書では、国立教育政策研究所教育課程研究センター『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』に基づき、単元ごと(国語と英語は言語領域ごと)に評価場面をどのように焦点化・重点化し、どのような評価課題・評価問題を作成し活用するかを具体的に示す。中学校の国語、社会、数学、理科、英語の教科別に、3年間で扱う全ての単元を網羅する。
単元ごとに重要な評価場面を2つ例示し、評価の難しい「思考・判断・表現」を中心に、評価基準に対応する生徒の学習状況や作品、解答例、記述例などを評価事例として紹介する。B評価の姿だけでなくA評価も例示し、さらに「B/A基準」と「判断の根拠」が示されているので、どこを見て判断すればよいのかが一気にクリアになる。
評価課題・評価問題のサンプルを通して、「単元の要所(ヤマ場)」と「単元で成長する生徒の姿」が見えてくる。本書を参考に指導と評価の一体化を図れば、生徒側にもおのずと大事な学習場面(ヤマ場)が共有され、単元のゴールに向かって主体的に学ぶ姿につながっていくことが期待できる。
価格(税込)は中学校5教科セット(国/社/数/理/英)1万4300円。分冊は各2860円。