学校図書館で今できること 館内環境整え居心地のよさを 工夫を凝らし利用促進を図る 埼玉県立川越女子高等学校

学校図書館特集【協賛企画】2025
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入口から見た図書館の様子=提供:同校中西学校司書

 本校は都心から電車で30分、さつま芋と蔵造りの街並みで有名な埼玉県川越市の街中にある。1906年に町立川越高等女学校として設立され、創立百数年を迎える伝統の進学校である。現在、生徒数は全3学年27クラスの1060人。学校図書館は教室棟とは別棟の2階に位置し、蔵書数は5万冊、座席数は9テーブル、15のキャレルデスクで全60席である。

学校図書館の利用状況

 本校における学校図書館の利用は、貸出や読書活動など以外に自習室機能としての役割があり、3年生を中心に積極的に利用されている。受験勉強は3年生になった4月から本格的に始まり、学校図書館は校内で自習できる場所となっている。

 学校司書の私には1、2年生の読書環境を保ちつつ、3年生が落ち着いて自習できるよう、館内環境を工夫することが求められている。その1つがレイアウトと居心地のよさの追求だった。

館内中央に置いた本棚

 自習スペースと読書スペースを区分けするには、本棚を館内の奥に設置することが一般的かもしれないが、思い切って館内中央に設置した。遮音効果は思った以上にあった。自習以外に学校図書館を利用する生徒にとっては本を探す際に自習スペースを通らなくても安心して書籍を探せるメリットも見出せた。また、ブラウジングのソフトソファは、マンガコーナーの前にして自習スペースからは死角になっていて視線が合わないよう配慮した。

館内奥側から見た図書館の様子=提供:同校中西学校司書
館内奥側から見た図書館の様子=提供:同校中西学校司書

居心地のよさの追究

 学校図書館では、自習スペースと読書スペース双方ともに満足度を高めるため、限られた館内のキャパシティーを有効的に活用し、決められた予算内で充実させることが求められた。解決策として見出したのが「癒やしのリサイクル」作戦であった。作戦の内容は、生徒に対し「いらなくなった『ぬいぐるみ』、第2の人生をさせよう」と呼び掛け、100を越える、動物やアニメキャラ、乗り物などバラエティに富んだぬいぐるみを集めた。集めたぬいぐるみは、館内のテーブルやカウンター机上、本棚やその隙間のデッドスペースなど至るところに置いた。これは想像以上に評判が良く、半年に1回、入れ替えて飽きないよう心掛けている。また、ぬいぐるみの置き方も工夫を凝らした。わざと背中向きにしたり、さかさまに置いてみたりした。その様子を見て微笑む生徒もいれば、向きを直してみたりする生徒もいる。館内の空間は生徒たちの癒しにもなっている。

カウンターの後ろに図書館キャラのオブジェ=提供:同校中西学校司書
カウンターの後ろに図書館キャラのオブジェ=提供:同校中西学校司書

学校図書館からの課題は読書感想文

 本校の学校図書館では変わった取り組みを実践している。それは、学校図書館が主体となり読書感想文の課題を出していることである(詳細は、(公社)全国学校図書館協議会『学校図書館』2024年5月号/特集2/読書感想文の指導「読書感想文、それは本との出会いから(中西隆志)」を参照)。

 国語科ではなく学校図書館が呼び掛けている夏休みの課題である(国語科として課しているわけではないので国語の評価には入らない)。課題のアナウンスは各クラスの図書委員に委ねている。各クラスの図書委員に対し、私から事前にいつ、どのようなタイミングで課題内容や想定される質問の対処法を知らせるかを決める。毎年、生徒にレクチャーする際は、「『ビブリオバトルを感想文で書きまくれ』と、みんなに呼びかけよう」と伝えている。ここで力を発揮するのが図書委員長の働きかけだ。生徒同士のコミュニケーション力を生かして笑顔で課題について呼びかけることや、「読書の感動を書いてプレゼン」などのキャッチコピーを示しながら発信をしてもらう。私のレクチャーよりも効果抜群で、生徒はうなずいて聞き入っている。課題に対しては、簡素な内容で提出する生徒も多いが、「書いてみたい、賞を獲得したい」という生徒も潜在的にいたりする。そのような中、2024年度には青少年読書感想文全国コンクールにおいて、文部科学大臣賞の受賞者を輩出した。このような新たな発見は取り組みの肝にもなっている。

やれることから始めよう

 学校図書館の利活用促進とその方法は各校それぞれである。生徒の読書への関心度、学校図書館のある場所など位置的なこと、学校図書館への予算や運営者の位置付けなどで、対応状況も異なり、時には制約を受けることもある。「与えられた条件下で、まずはやれることからやってみよう」と日々、自問自答しながら実践に取り組んでいる。

 (埼玉県立川越女子高等学校学校司書・中西隆志)