近年、いじめと不登校の問題は大きな課題として認識されているが、全国で146万人もいるとされるひきこもりの問題は後回しにされており、ひきこもり者に対してのケアや支援の仕組みも十分ではないのが実態だ。
本書は、臨床心理士でスクールカウンセラーの著者が、長年不登校生徒やひきこもり者に寄り添ってきた経験をもとに、ひきこもり支援の考え方、進め方を伝える本である。
ひきこもりが増加している背景にあるのは、ひきこもり状態にある人とその家族が孤立してしまっていることだ。教育期間中であれば、不登校の子どもや保護者に対して担任やスクールカウンセラーが関わり継続的に支援を行うが、教育期間が終了してしまうとその支援を引き継ぐ人が存在しなくなるからだ。
そこから孤立状態となり、結果ひきこもり生活が続いていくことも多い。「教育期間中に不登校となった生徒の何割かはひきこもりになる」という実態を理解しておくことが大事となる。
家の中にひきこもり者がいても、家族としては隠そうという気持ちから、福祉や医療に助けを求めないケースも少なくない。また、いったんひきこもると何十年もたってしまうことも多いことから、ひきこもり者の世話をしている家族の高齢化も課題となっている。
家族や支援者のみならず、学校教育に関わる多くの人に一読してもらいたい。