チカクサク

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くもん出版
教育新聞ブランドスタジオ
今井恭子 作 いとうあつき 画 1650円

 戦後の傷跡が残る1950年代を描く物語の舞台は、総勢11人が暮らす大所帯の履物屋である。その履物屋で育つ少年・英治が主人公。混とんとした時代の中でさまざまな境遇、立場の人たちと関わり合いながら成長していく。

 英治が5歳のとき、少し目を離した隙に3歳の弟が2階から転落して命を落とす。英治は弟が死んだのは「ぼくのせいだ」と罪悪感を抱えて生きるようになる。

 傷ついた英治をおもんばかって非日常の世界へと誘い出してくれる叔父、ろうそくと炎の絵ばかりを描き続ける、絵師と名乗る女性との出会いなどを通し、やがて英治は弟の死を少しずつ乗り越え、たくましく成長していく。

 人間の弱さと強さ、世の中の不条理、戦争の爪痕などが心に響く。