社会の多様化が進み、障害、国籍、性別、宗教、経済状況など、さまざまな背景を持つ子どもが同じ環境で学べる教育〝インクルーシブ教育〟の理解が急務となった現代社会。本書はインクルーシブ教育を初めて学ぶ読者を対象とした入門書だ。
全15章を4部に分け、それぞれの分野の専門家が各章の執筆を担当している。第Ⅰ部では、インクルーシブ教育の歴史的な歩みを深掘り。マイノリティーとマジョリティーの視点を交えながら展開されており、インクルーシブ教育が決してマイノリティー優遇の取り組みではないことが分かる。第Ⅱ部では、障害を持っていたり移民背景があったりなど、マイノリティーとして生きる子どもの現状にフォーカス。それぞれの置かれている状況をひもといていく。
第Ⅲ部では、諸外国のインクルーシブ教育の実情と課題を紹介。諸外国との比較検討を通して、日本の教育制度が遅れている点、学ぶべき点を明確にする。第Ⅳ部では、インクルーシブな教育や社会を実現するための具体策が並ぶ。事例を取り上げながら、今やるべきことを丁寧に示す。
インクルーシブ教育について俯瞰(ふかん)的かつ包括的に学べるため、教育現場で課題に直面している教師だけでなく、教育や福祉に関心を持つ人にも有益な情報が多い。入門書だけあって分かりやすい記述ながら、深い洞察も盛り込まれており、インクルーシブ教育への理解を深めてくれる。