東日本大震災発生時に宮城県の高校教頭として避難所運営にあたった筆者と、全国の被災者たちとの対話をまとめた一冊である。
3つの章に分かれており、第1章では東日本大震災でわが子を亡くした遺族が当時の状況を回想。遺体になった自身の子どもと再会した時の心境が生々しく語られ、読んでいる最中は終始身につまされる。中でも、当時高校1年生だった息子を亡くした両親が、子どもを持つ人たちに向けたメッセージは印象的。「自分のような後悔をしないでほしい」という思いが伝わり、両親のやるせなさを感じた。
第2章では台風や豪雨といった水害による被害を受けた人たちが自身の体験を振り返る。水害が発生した際の現地で暮らす人たちの具体的な行動を詳細に記す。他人同士が同じ空間で生活することによって生じるトラブルなど、ニュースではあまり映し出されない避難所生活のリアルが垣間見えた。
第3章では医療従事者から話を聞く。避難所生活における感染症リスクに触れるだけではなく、避難所で生活する人のメンタルヘルスにも言及。また、コロナ禍で向けられた差別や偏見についても語り、医療従事者ならではの苦労も口にしており、多角的な視点から災害を考えることができる。
災害大国と言われる日本において被災者の声は決して他人事ではない。本書を通じて「災害が何をもたらし、何を奪うのか」を今一度確認した上で、今必要な災害対策に目を向けたい。