ICT環境の整備を早くから進めてきたアメリカの学校教育におけるICT活用ノウハウ、先行事例を紹介する。著者である2人はともに、2008年ごろから大規模な公立高校で1人1台端末を使った授業をスタートし、同僚のサポートにも長く関わってきた教員だ。
コミュニケーションとワークフロー、エンゲージメント、コラボレーション(協働)、オーディエンス(発表の対象)、一人一人を生かす、フィードバックと評価、創造性とイノベーションなど、日本の教育においても重要とされるキーワードに沿って構成されている。テクノロジーをどう活用するかではなく、「教えること」と「学ぶこと」に焦点を当てて解説する。
PartⅠでは、1人1台端末による授業が教育の質や価値を向上させ、児童生徒の人生を充実させることにどのようにつながるかを学ぶ。続くPartⅡでは、学びのネットワークが物理的な空間、合う時間によって制限されないように、教育ICTはどのように教室の壁を取り払い、どう学びを拡張させられるかについて考える。PartⅢでは、教師の教え方のルーティーンの中で児童生徒が学びを自分のものにするために、教育ICTはどのような変革を引き起こすことができるかに迫る。
本書が出版されたのはコロナ禍以前の15年と決して新しい本ではないが、ICTの活用がある程度進んだ現在の日本の学校にも多くのヒントを与えてくれる。