これから大人になるアナタに伝えたい10のこと

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童心社
教育新聞ブランドスタジオ
サヘル・ローズ 作 1650円

 俳優やコメンテーターとして活動する傍ら、国内外問わずに支援活動を続けているイラン出身の筆者が、これから大人になる中高生に向けて書いた人生指南書。

 本書は作者が自身の過去を振り返りながら進行していく。序盤、イラン・イラク戦争の最中に生まれ、家族を失い、7歳まで孤児院で育った幼少期の記憶を記す。その後、愛情深い養母に引き取られ、日本で生活するようになるが、そこで待っていたのは養父からの虐待や公園での路上生活、小中学校でのいじめ。日本での生活に心身ともに憔悴(しょうすい)しきっていた筆者をさらなる悲劇が襲う。イラン帰国時に起きた叔父からの性被害だ。これをきっかけに希死念慮を持つようになる。当時の状況から心情まで生々しくつづられおり、胸が締め付けられてしまう。

 それでも、進路に悩みながらもやりたいことを見つけ、前向きに生きようとする姿に勇気が湧いてくる。何より本書内は「大勢に認めてもらうことを求めずに生きてほしい」「アナタは透明人間じゃない」と読者に寄り添う言葉が並び、説教臭さはない。温かいメッセージばかりで、胸の中のもやもやを晴らしてくれるだろう。

 また、筆者視点で語られているため、マイノリティーの人が日本で暮らす時に発生する困難や差別の実態も知れる。「自分軸」はもちろん、多様性が重視されるべき理由も見つけられるはずだ。生きることに悩んだ際の羅針盤になってくれる一冊である。