中学校や高校では近年、「探究」学習が活発に行われている。だが、現状では自然科学研究、社会課題解決、地域貢献などをテーマに掲げるケースが多く、理科系分野ではその成果を発表する場としてさまざまなコンテストも企画されている。
一方、私たちにとって最も身近な存在である日本語に目を向けてみると、その不思議さや面白さを起点とした研究対象は無限にある。日本語に感じる謎にこそ、気付いた人にしかできない大きな発展が期待できる研究の種があるものの、これまで言語研究は専門家の領域と見なされ、中高生が探究テーマに掲げるには敷居が高いと思われている現状がある。
この状況を打開すべく、日本語への興味関心を広く喚起したいとの思いから誕生したのが、日本語学会が主催する「中高生日本語研究コンテスト」だ。2022年にスタートし、現在第4回のコンテストの募集が始まっている。本書は、今後コンテストに挑戦する中高生、指導役となる教員に向けたハンドブックである。
第Ⅰ部では、コンテストの優秀作から特徴ある8つの事例を取り上げ、研究の面白さや学術的な背景を分かりやすく解説する。コンテストに応募するのに大いに参考となる。
第Ⅱ部では、研究の指導に当たる教員に向けた理論編で、日本語学会の立場から、中高生の国語の強化と日本語研究との関わりについて15の観点で論じる。