子ども一人一人のペースに合わせられず、子どもの主体性を奪うとして、批判の目を向けられやすい集団教育。ただ、本書では個を集団と対立させるのではなく、集団の関係の中で見えてくる特性としての「個性的な部分」と捉えつつ、集団だからこそ得られる学びの可能性を模索していく。
全3部から構成されており、各部は3つの章からなる。各章には大学教授や定時制高校教員など、多様なキャリアを持つ著者たちが、集団における学習を独自の視点から論じる。
第Ⅰ部では、教室内における学びを客観的に捉え、改めて集団で学ぶことの意味を深掘り。決して世間一般でイメージされているような、一方通行なものではないことに気付く。それと同時に、教師の立ち回り次第では、詰め込み教育にも十分なりかねないリスクがあることもうかがえ、授業の在り方を考え直したくなる。
「読書」という観点から集団での学びを掘り下げていく第Ⅱ部も面白い。「一人で静かに行われるもの」と思われがちな読書の前提を問い直し、「集団で読むこと」がもたらす学習効果を示す。そして、第Ⅲ部では、個の学びと集団の学びの関係性を見直し、より良い学習にアップデートするためのアイデアを紹介する。
集団教育はどこか盲目的に批判されている印象が強い。それ故に、集団での学習について冷静な評価を試みる本書の意義は大きい。