知って広がる教師の世界

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北樹出版
教育新聞ブランドスタジオ
鹿嶋真弓、所澤潤 編著 2420円

 精神疾患を理由に教職員の休職者が増加傾向にあるなど、教育現場の過酷さを知らせるニュースは多い。教師志望者が年々減っている中、教員養成を専門に学ぶ学部を選んでいない大学生向けに、教職課程の魅力を届ける本である。

 全13章で構成。各章を社会福祉学や心理学といった多様な学問の専門家が執筆を務め、教師の歩む世界をさまざまな角度から描く。序盤では、教師は子どもだけでなく、自分自身も育む仕事であることが語られる。中学校教師として教育困難校で教壇に立ち、同僚の教師と連携した過去を振り返る執筆者もおり、子どもとともに教師が成長する過程に胸が熱くなる。

 中盤は学びについて掘り下げ、とりわけ日本語教育が多く語られる。外国籍の子どもに日本を教える様子や授業での方言の扱い方など、教育というフィルターを通して「日本語」の奥行きを示す。終盤では、学校に焦点を当て、夜間中学の概要に触れ、戦時中に起きた学童集団疎開まで取り上げる。教育の歴史から現在の状況まで幅広く論じ、学校が持つ役割に興味関心を抱きたくなった。

 教師の仕事は長時間労働や保護者のクレームなど、ネガティブな情報ばかりが目につきやすい。ただ、本書からは教師の大変さを感じつつも、やりがいにあふれた仕事であることが伝わってくる。教師という仕事の理解を深めることもでき、教員志望ではない学生をターゲットにしてはいるが、現役教師にも手に取ってほしい。