教育新聞の教員採用試験ガイドです。
教員採用試験の合格は「ゴール地点」であると同時に、長い教職人生の「スタート地点」でもあります。その意味で、合格したからといって浮かれていてはいけません。4月の新学期に向けてしっかりと準備をしなければ、新学期早々、痛い目にあうかもしれないからです。最高のスタートを切り、周囲からの信頼を得るためにも、以下のような準備をしましょう。
最も大切な準備は、教科書を読み込むことです。自身の校種・教科の教科書を読み、理解が曖昧な領域があれば、丹念に復習するなどして理解を深めておきましょう。その過程で、授業で使えそうなマメ知識などを発見したら、ノート等に書き込んでおいてもよいと思います。どの教科書会社も、単元別に指導のポイント等をホームページ上で公開しているので、参考までに読んでおくのもお勧めです。
赴任先の学校がどの会社の教科書を使っているかは分かりませんが、教科書はどれも学習指導要領に沿って作られているため、事前の予習が無駄になることはありません。小学校の場合は6学年あって大変ですが、初任者は2~4年生を担任するケースが多いので、その学年の教科書は特に入念に読み込んでおきましょう。
次にお勧めしたいのは、授業や学級経営に関する市販の解説書を読むことです。校種・教科別にたくさんの本が出版されているので、何冊か読んで見識を深めておけば、着任後の指導に生かすことができます。
授業に関しては、効果的な板書のし方、発問のコツ、学習活動の方法などについて書かれた本が出ています。また、最近はICTの活用が求められているので、そうした解説書を読んでおくこともお勧めです。
学級経営に関しては、年度当初の「学級開き」のやり方、係や当番活動の回し方、子どもが喜ぶ教室の掲示、いじめの防止・対応法などについて書かれた本が出ています。
これらの解説書は、内容的に高度なものから入門的なものまで幅広くあります。できるだけ図解などが入った入門書を選び、できれば書店で立ち読みするなどして、理解できそうなものを選ぶようにしましょう。
いくら教科書や解説書を読み込み、教科指導に関する知識を深めても、それだけで良い授業ができるわけではありません。大切なのは着任前から練習(模擬授業)を重ね、45~50分授業の感覚を養っておくことです。
例えば、共に採用試験を受けた仲間で集まり、教師役と生徒役に分かれて、互いの授業を評価し合うなどすれば、緊張感をもって練習することができます。教職経験のある先生等に見てもらうことができれば、なおよいでしょう。
教師として着任すれば、目が回るような日々が待っています。来る日も来る日も授業の準備に追われ、プラスアルファのことを学ぶ時間はなかなか取れません。だからこそ、着任前に理解を深めておきたいのが、学校教育の制度的な仕組みについてです。
文部科学省や教育委員会など教育行政の仕組みはどのようになっているのか、学習指導要領はどのような手続きを経て改訂されるのか、教育公務員にはどのような義務が課されているのかなど、基本的なことを理解しておきましょう。自身が着任する都道府県や区市町村でどのような事業が行われているのかについても、再度確認しておくとよいでしょう。
「現場に慣れる」という意味で、お勧めしたいのが教育ボランティアへの参加です。数カ月単位で学校へ足を運び、日々の教育活動を観察・サポートすれば、学校教育のリアルな実情を知ることができます。ベテラン教師の卓越した指導術を見て着任後の指導に生かすこともできますし、解説書で仕入れた知識を現場レベルで確認・検証することもできます。また、自分が子どもの頃にはなかった「1人1台端末」を活用した授業を見ることもできます。