EDIX(教育総合展)座談会/新企画「教育委員会向け研修・交流会」開催/GIGAの成果と今後を「分かち合う」場に

【協賛企画】
RX Japan株式会社
教育新聞ブランドスタジオ

 国内最大の教育分野の展示会「EDIX」(教育総合展、主催=EDIX実行委員会)が今年も東京(5月)と大阪(6月)で開催される。「教育の未来を紡ぐ 新たな可能性の起点に」をミッションに掲げ、新ロゴマークのもと着々と準備が進められている。今回、EDIXが企画するセミナーで注目を集めそうなのが【特別企画】「教育委員会向け研修・交流会」だ。教育委員会、小中高の教職員、ICT支援員などに参加者を限定し、学校でのICT活用促進に向けた各種セッションが開かれる予定だ。登壇予定の自治体担当者らが一足先にオンライン上に集結。EDIXの魅力と特別企画への期待を語った。

  • 出席者
  • (一社)教育情報化推進機構 理事長/信州大学 名誉教授 東原 義訓氏
  • (一社)教育ICT政策推進機構 代表理事(前奈良市教育委員会) 谷 正友氏
  • 前鴻巣市教育委員会 新井 亮裕氏
  • つくば市教育委員会(現 みどりの学園義務教育学校教頭) 中村 めぐみ氏
  • 新宿区富久小学校 岩本 紅葉氏
  • 甲府市教育委員会  山主 公彦氏
  • 大分市教育委員会  上野 真氏
  • 司会・EDIX実行委員会 事務局 花籠 良
オンライン上で一足早く集まっていただいた登壇予定者
オンライン上で一足早く集まっていただいた登壇予定者

先進自治体のICT担当者が集結

——【特別企画】「教育委員会向け研修・交流会」は教育委員会関係者が同じ目線、同じ課題を共有しながら「インタラクティブに学べる場」となるよう準備を進めています。EDIXとしては初の試みなのですが、登壇予定の皆さまはどのような取り組みやメッセージを会場参加者に伝えたいですか。また、全国から参加する教育委員会関係者に聞いてみたいことは何でしょうか。リアル交流会への期待もお話しください。

上野 大分市では現在、GIGA端末(iPad)の管理運営や年度更新が比較的円滑に進み、統合型校務支援システムの導入も進めているところです。クラウドツールを活用した保護者との連絡など、次世代システムの稼働までに進めるべきとされる「過渡的な取組」をお伝えしたいと思っています。

 会場にお集まりの教育委員会の皆さまには「これからどうする?」とたずねてみたいです。これまでに構築したシステムのアップデートや、機器更新に向けたエビデンスや補助金についての考え方についても情報交換したいですね。

 GIGAスクール構想の実現に向けてこの数年間、無我夢中で取り組んできた全国の担当者たちは、自分たちの「立ち位置」に不安を感じているのではないでしょうか。ぜひ、多くの先生方とつながることで「よし!」と自信を深めたり、「なるほど」と、ヒントをもらえたり、「ヤバい!」と刺激をもらえる交流ができたらと思います。

山主 甲府市はGIGAスクール構想の実現に向けて教員研修に力を入れてきました。約千人いる教員が合計3回以上受けた計算になります。それでも現場からはさらなる研修を望む声が上がっていますので、他の自治体はどうしているのか、研修に関する課題を共有できたらと思います。

 また、自治体の参加者の皆さんがトラブルをどう乗り越えてきたのか、端末やシステム導入時の苦労や成果をお聞きしてみたいです。GIGA1年目が回線などの物理的なものだったのに対して、2年目の壁は「利活用」がキーになるのかなと予測していますが…。ぜひ「小さな労力で大きな変化が得られた」事例をうかがいたいです。

昨年の会場の様子
昨年の会場の様子

 自治体の担当者と話しているとICT活用に関して「文科省の方針は分かるがどう実現していけばいい?」「かえって多忙になるだけでは」などの声が聞こえてきて、教育委員会はある種の閉塞感に包まれているのかもしれない、と感じるこの頃です。でも、本来のICT活用とは「ラクしていいことをやる」もののはず。みんなでハッピーな世界に行きたいよね、という話をしたいです。

 だからこそ参加者には「本当の本当に困っているのは何か」をぜひうかがいたいです。技術的なものもあるでしょうし、あるいは制度や人間関係かもしれません。忌憚なく話せればいいかなと思います。あと、教育委員会は首長部局などに比べ自治体同士の横つながりが薄いと思います。交流会が「そんなこともできるんだ」という気付きや、関係づくりのきっかけになればと思います。

新井 前職の鴻巣市では、計画立案から予算折衝、現場への研修まで指導主事と一体感を持ってICTの教育環境を抜本的に改善してきました。その経験をお話しできたらと思います。また、フルクラウド化や運用ネットワークの統合で校務の情報化を推進し、結果的に働き方改革が実現できた。それを支える技術面の話も加えようと考えているところです。

 参加される皆さんからは事例だけでなく、 GIGAでどう変わったのかという各地の実際の状況を聞きたいです。次のGIGAに向けて予算を勝ち取るには「学校がICT活用でたしかに変わったのだ」というメッセージ性が重要になってきます。その示唆が得られる場になればと思います。他県の人と気軽に話せ、苦労話を分かち合える”つながり”が生まれる場になればと楽しみにしています。

中村 「個別最適な学び」の考え方から発展した、つくば市のデータ利活用の取り組みを中心にお話する予定です。現場の先生が「知りたい」「取り組みたい」ということが出てきたときに、どのようにデータを活用したら実現できるのか、それを具体的なストーリーにして提供できたらと考えています。

 もう一つは、デジタル教科書の活用についてです。実は本市では活用の学校間格差が拡大しており、解消に向けた授業スタイルを模索中です。その姿もお見せできればと思います。ぜひ、ご参加の先生からも学校間格差の乗り越え方、更新に向けた予算などの考え方についても情報交換できればと期待しています。

岩本 ICTを組み合わせることで、児童の創造性を高めることが可能であること。そして、公立小学校でも努力しだいでできることはたくさんあることをお話ししたいです。参加される先生からはGIGAスクール構想が始まってからどれくらい変容があったかを聞いてみたいですね。授業の実施の仕方、子供たちの学び方、教師の働き方など。また、ICTを推進していく上で苦労されていること、それを乗り越えるためにどのようなことをされたのかを伺いたいです。よく実践発表をすると、「うちの自治体ではできない」「前例がないから認められない」という言葉を耳にします。先進的な取り組みをされている自治体や先生方と交流することで様々な実践例を伺い、そのことを自校や他校にも伝えたいと思います。

刺激を受け、課題解決のヒントになるEDIX

——ありがとうございました。「あの市はどうしているのだろう」という関心は、参加する教育委員会関係者が強く持っているところです。どれも参考になる発表が聞けそうですね。
 さて、皆さんはこれまでEDIXに参加してよかったと感じたことはありますか? 今年のEDIXで楽しみにしていることは何でしょうか。

昨年の会場の様子
昨年の会場の様子

上野 製品やサービスの情報はネットで調べればそれなりに入手できる時代ですけれど、「行くと違う」のがEDIXの魅力ではないでしょうか。メールで事前にやりとりしていた人とリアルで会って盛り上がったり、偶然の出会いが新たなつながりに発展したりすることもあります。教育委員会もみんなわいわいつながり、次のGIGAを迎えられる会になればと期待しています。

山主 教育委員会の中でICT担当は、周囲に相談できない状況に置かれがちです。その点、EDIXは多くの人と出会うことで課題解決の方向性が確認できるのがいいところです。帰り道に「がんばろう!」という気持ちになれるEDIXを期待しています。

新井 教育委員会のメンバーと3人で初めて参加した時、帰り道で「やっぱり教育を変えていかなきゃ」と、それぞれの心に火が付いたのを思い出しますね。それぐらいEDIXは最先端を走っている有識者の話や最新の技術動向に触れ刺激を得られる場所です。また、いろいろな事業者のデモを見られるのも貴重な機会になります。市役所でデモ会を開くのは労力がかかりますが、EDIXならふらりと立ち寄ることができるのもメリットです。

 私が初めてEDIXに参加したのは2017年の大阪でした。自治体に勤務し始めて、仕事の進め方に迷っていたときだったので、EDIXで出会った先生方とのつながりは、その状況を打開する原動力になりました。「同じように悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と気づけたのがうれしかったです。今年もそう感じてくれる人をもっと増やせたらなと思っています。

中村 EDIXに行くとその年度のトレンドや方向性が会場全体から伝わってきますね。次に目指すところが見えたり、置くべき視点など刺激をもらったりして帰れます。対面で企業さんの思いが直接聞けるのがいいですし、突っ込んだ会話もできます。今年度はデジタル教材に着目してシステム連携や標準化の意識をチェックしたいと思っています。

岩本 「この先生の話が聞きたい」という思いで毎年、EDIXに参加しています。会場に行くとどこかでお見掛けした先生がいることも多いです。また、講演で座って聞いていると「隣の先生はどんな実践をしているんだろう…」という気持ちになることも度々ありました。ですから今回の交流できる新企画はとても楽しみです。企業の方に「こんな授業をしたいのだけれど」とお話すると、モニターとして貸出してくれるチャンスも過去にあったので、一般の教員が新しいことに挑戦できるきっかけになると思います。

——最後に東原先生、これまでの話のまとめと、「教育委員会向け研修・交流会」参加者へのメッセージをいただけますか。

東原 重要なテーマがたくさん出ましたから、これはもう登壇する皆さんの話に期待が膨らみます。そこに加えて言うなら、EDIXに参加していると去年と今年の話の「差分」を感じられる点が楽しいのです。今、教育界でキーワードになっている「ウェルビーイング」も早い段階から語られていました。中村さんが「EDIXに行くとこれからの動向が分かる」と話していたように、EDIXや各企業が開くセミナーそのものが教育界に果たす役割はとても大きいものがあると感じています。

 そんな有意義な場だからこそ、私はEDIXで「さびしい思い」をしている人がいないか、ということにも思いを馳せたいと思います。これまで私は講演やシンポジウムのコーディネーターをする縁に恵まれ、EDIXでいろいろな方と交流する機会を得ることができました。でも、会場には1人で参加している人がいるはずですし、残念ながら来ることが叶わなかった人もいると思うのです。今後は、より多くの方が参加しやすいようなEDIXになっていくことを期待しています。

——ありがとうございました。

EDIX詳細はこちら