小学校、中学校、高校へと続いていくキャリア教育や探究学習の授業。身の回りの社会課題にどう興味をもってもらうか、さまざまな職業、多様な働き方をどのように伝えていくべきかと悩んでいる学校や教員も少なくないはずである。一人一台端末が実現した今、キャリア教育や探究学習の新たな在り方を提案するのが、一般社団法人次世代教育・産官学民連携機構(以下、CIE)が提供する共創型次世代教育プラットフォーム『BEE-Together』だ。「明日の授業でもすぐに活用可能」という『BEE-Together』はどのようなコンテンツを公開しているのか。CIEの市野敬介氏に話を聞いた。
(BEE-Togetherはこちらから)
『BEE-Together』は、小中学校、高校におけるキャリア教育や探究学習、課題解決型学習などの授業にすぐに取り入れられるコンテンツをまとめたプラットフォーム(ウェブサイト)である。最大の特徴は、通常の学校教育の中だけで実現するには難しいユニークな体験や、普段なかなか会う機会がないさまざまな職業に就く社会人のインタビューなどが豊富に揃っているところだ。リリース開始から約1年で、登録者数はすでに1万人を超えている。
市野氏によると「仮想空間の職場で社員となり、上司や先輩から仕事の依頼を受けるというリアルな体験ができる『VRプチ職場体験』や、これまでに40種類の仕事をしてきた人など多種多様な経歴をもつ社会人のインタビュー動画『未来望遠鏡』などの人気が高い」という。
今年度からは、さらに掲載コンテンツの内容が大幅にパワーアップした。「キャリア教育についていえば、その道のプロフェッショナルといわれるような著名人や多様な働き方をしている方を中心に、子ども達へのメッセージ性が強いインタビュー動画が大幅に増えて、内容的にも幅広く多彩になりました」。
コンテンツは短いものでは5分程度、長いものでも30分程度の動画が中心であることから授業に取り入れやすく、いずれもCIEに参加する企業やNPO法人、社団法人等が制作しているので安心して利用できる。その制作元の団体の協力によって、今年度からは企業訪問や出張授業も積極的に受け付けている。
「どんな企業に訪問できるのか、どのような出張授業ができるのか、プラットフォーム上に具体的な内容を掲載しています。ぜひ一度のぞいてみて、企業訪問や出張授業も積極的に活用していただきたい」と話す。
新たに追加されたコンテンツとして、「あなたを変えた一日」(提供;一般社団法人OneDaySchool)を紹介したい。このシリーズは、多様性の時代を生きる人たちの道標となるインタビューを15~30分程度の映像にしたもので、服部栄養専門学校校長の服部幸應さんや、松岡 修造氏とペアでプロテニス選手として活躍していた過去をもつ甘露寺重房さんなどが登場し、これまでを振り返って若い世代へのメッセージを伝えてくれる。
アフターコロナとなり、「キャリア教育」というと全校児童・生徒を集めて行う社会人講話を開催しなくてはいけないと考えている学校、先生方も多いかもしれない。しかし、市野氏は「みんなが一斉に同じ話を聞く必要はないのでは?」と指摘する。
「『あなたを変えた一日』シリーズは、現在10人の方のインタビューが掲載されており、今後も増えていく予定です。一人一台端末を活用して、個々の興味に合わせてインタビューを選んで視聴し、心に響いたことを共有する、あるいは、クラスで分担していくつかの動画を見てお互いに紹介し合う、といった新たなキャリア教育の在り方を提案していきたいです」。
『BEE-Together』は、全国のモデル校と連携して継続的なカリキュラムマネジメントのサポートも続けている。市野氏が今後力を入れていきたいと考えているのが、校外学習や宿泊行事と探究学習を融合させ主体的な学びへとつなげていくことだ。2022年12月には、福島県の小学校において、修学旅行の事後学習として会津若松のデジタル化に関わっている企業による探究学習の授業を支援した。
福島県二本松市立大平小学校は、毎年、校外学習で県内の会津若松市を訪れている。東北、関東エリアの学校の修学旅行や校外学習の目的地として選ばれることの多い会津若松市は、歴史や伝統を中心とした観光地を回るのが一般的だ。一方、会津若松市は2012年から「まちのデジタル化」の実証実験を進めており、オンライン診療の導入、除雪車の位置情報をリアルタイムで確認できるサービスなどさまざまなデジタル化に着手し、まち全体のスマート化が進む最先端地域でもある。
市野氏は「スマートシティの取り組みやまちの変化を知ることで、デジタル化とは何を意味するのか、デジタル化によってどんなまちに変わるのか、自分事として考える絶好の機会になると考えた」と話す。
大平小学校で出張授業を体験した担当教員からは、「県内のことなのに知らなかった、大人の私たちも勉強になる」「今の社会がどうなっているのか、学校内で具体的な事例を伝えていくのは難しい。修学旅行で実際に行った場所について事後授業で学ぶと、生徒がリアルに自分事として考えることができる」といった感想が上がったという。
この事例をモデルケースに新たに出来上がったコンテンツが、「まちのデジタル化 スマートシティ会津若松」となる。
「会津若松に修学旅行に行く学校に限らず、『スマートシティ会津若松』の内容は『デジタル化とは?』について考えるきっかけとなる内容になっています。小中学校の公民、現代社会、技術家庭科や高校の情報系教科等、幅広い学年、教科で活用できると考えています」。
『BEE-Together』を運営するCIEは、「様々な人や組織が連携した次世代教育を実現したい」との想いに賛同した企業やNPO法人、社団法人などが集まって発足した一般社団法人である。参加団体は『BEE-Together』にコンテンツを提供しているだけでなく、企業訪問の受け入れや出張授業も紹介して行っている。
前述の「まちのデジタル化 スマートシティ会津若松」以外にも、小学生向けの出張授業プログラムとして展開している「わたしたちのまち」、中学生向けの「ゆら社長のジレンマ」、中高生向けの「Catch Your Dream(対話を通じて将来を思い描く)」、高校生向けには「Economics for Success」などのプログラムを用意しており、対面及びオンラインで出張授業を行ってくれる。プログラムの紹介ページから依頼や相談ができるようになっているので、ぜひ一度確認してみてもらいたい。
『BEE-Together』のコンテンツは、動画に加えてグループワーク用のテキスト、ワークシートなどのコンテンツも用意されていることから、日々の授業ですぐに活用できる点が好評だ。完全無料で、教員枠で会員登録をすればすべての資料がダウンロード可能となっている。
さらに、CIEでは、キャリア教育や探究学習、課題解決型学習を進める上でさまざまなサポートを行っている。「学校や教育委員会向けの『BEE-Together』の説明会や情報担当者向けの研修としてICTの活用をテーマとした研修のほか、現場の先生方に向けてキャリア教育や探究学習、総合的な学習の授業づくりの提案など、幅広く対応しています」。
ようやくコロナの制約がなくなり、多くの学校行事も復活し始めた。市野氏は「『BEE-Together』を最大限活用いただいて、新しいキャリア教育、探究学習の在り方にアップデートしていただきたい、というのが私たちの考えです。今後はどんどん学校現場に出向いて、さまざまな提案をしていきたい」と意気込む。
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