教育現場のICT活用は確実に広がっているが、その運営方法や経費は学校ごとに異なり、抱えている課題も多様化している。「保護者への連絡が確実に行き届くようにしたい」「事務作業を効率化し、児童生徒と向き合える時間を増やしたい」などの悩みに寄り添ったソリューションの一つが、8月24日に東京で行われた「教育と研究のDXフォーラム」で示された。教育支援情報プラットフォーム「in Campus」シリーズだ。
キヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)文教ソリューション営業本部第二営業部・岸由里絵氏による講演から、教職員の働き方改革を推進し教育の個別最適化を支援するための最先端技術を探る。
キヤノンITソリューションズでは、1990年代から先端技術を用いて学校現場の困り感に寄り添ってきた。現在も、端末ソリューションや情報基盤インフラ、校務システムなどグループ総合力を生かした付加価値の高い文教ソリューションを提供している。
その一つが今回取り上げる教育支援情報プラットフォーム「in Campus」シリーズだ。
「in Campus」シリーズは元々、2011年に明治大学に向けて開発したシステムから始まっている。その後東京大学にITC-LMS(Information Technology Center-Learning Management System/東京大学情報基盤センターが本学の教職員及び学生に対して提供する学習管理システム)を提供。同年、パッケージとして「in Campus」シリーズをリリースした。
2021年にはクラウド版のサービスを開始しており、本年8月、満を持して小中高向け「in Campus School IM」がサブスクリプション型サービスで登場した。現在進行形で教育現場の意見を吸い上げながら、サービスに反映し続けている。
自身も中学校教員としての経験を持つ岸氏は、「キヤノンITSが考える教育DXの課題は、『教員が”生徒に向き合う時間を増やす”ために”教員を支援”すること』です」と強調する。
デジタルはあくまでツール、手段にすぎず、現場に合ったものを提供すべきだというのがキヤノンITSのポリシーだ。そのことによって教育の質や教員のモチベーション向上が期待できるのだという。
「in Campus」シリーズは、学内情報発信の窓口となる「ポータル」と、授業シーンで利用される「LMS」を中心に構成されている。大学教育で必要とされる主要な機能を装備した大学向けの教育支援情報プラットフォームだ。
システムのコア部分のみをパッケージ化することで導入コストを大幅に軽減。コアの上位レイヤー部分にあたるデザインの基調色変更や、各種機能追加などのカスタマイズに柔軟に対応できることとなった。また、学内の他のシステムとの連携が容易なのも特長といえる。
予算が限られている教育現場において、品質と価格のバランスは重要なポイントだ。
その点、「in Campus」シリーズは限られた予算の中で高品質を実現した。既存のシステムを活用し構築するセミオーダー方式だからこそ実現した価格であり、パッケージ製品とフルスクラッチ開発の「いいとこどり」だといえる。
小中高校に向けて、「学校情報の全ての『入り口』を集約し、業務の効率化を図るとともに、コミュニケーションを活性化させるツール」をコンセプトとして開発された。
この製品は、大きく分けて「ポータル」と「LMS」そして「ダッシュボード」で構成されている。
「ポータル」は各種のお知らせやカレンダー、SNS連携など学校内のあらゆる情報を管理することができる。
「配付物を保護者に読んでもらえたか不安」「配付物の印刷やアンケートの集計業務が煩雑」などの声が聞かれるが、「ポータル」の機能を使えば、学校からの連絡や保護者からの申請が簡単に行える。生徒・保護者/教員・職員のような権限ごとに必要なリンクを管理者が設定できる点も心強い。
業務改善最大のポイントは「欠席情報入力」だ。これまで、「保護者からの欠席連絡を、受付から校務システムに入力するまでの手数が多い」という課題があった。学校受付から担任が出席簿に転記し、さらにそれを校務システムに入力しなければならなかったためだ。
「in Campus School IM」導入によって、保護者が入力した欠席連絡を担任が「承認」するだけで校務システムに反映されるようになった。朝の忙しい時間帯に、この機能は非常に役立つのではないだろうか。
「LMS(学習管理システム)」は生徒が学習する際にベースとなるシステムだ。授業ごとに「課題」や「資料配付」などを教員と生徒の間でやり取りできる。
「クラスの生徒の他教科の状況を知りたい」など、教科担任・学級担任の立場で感じる学習指導の課題を解決してくれるツールでもある。
ポイントとなるのは、「担任クラスの生徒の状況把握」だ。システムを通して授業担当と担任が情報共有できるようになり、提出物や学習の状況が分かりやすくなった。適切なタイミングで生徒に声を掛けられるようになっているという。
教材・資料のアップロードや課題作成・配信・確認が簡単で、生徒の閲覧状況も確認できる。未提出の生徒には「お知らせ」を追加で配信することも可能。生徒が提出した課題に対し、フィードバックを登録できるのもうれしい機能だ。
「急遽変更になった授業の連絡を生徒全員に届けたい」「部活動や委員会活動の連絡をもれなく届けたい」というニーズにも応えられる。
「ダッシュボード」は進路指導に役立つ機能だ。生徒の学習履歴や成績、模試結果や課外活動など、多彩な生徒情報を可視化できる。
「面談の資料作成に時間かかる」「卒業生のデータを在校生の進路面談で活用したい」―進路指導の現場ではこのような悩みがよく聞かれる。この点、「ダッシュボード」に受験情報を入力しておくことで、在校生と卒業生の成績比較が容易になった。進路に関わる情報を一元管理することで、資料の作成にかかる時間と労力もかなり削減できる。
「面談にかかる事前調査や準備時間の短縮を図り、業務改善につなげることができます」と岸氏はいう。
これらの機能にアクセスできる画面はシンプルで操作性が高く、誰にとっても使いやすいものとなっている。ITツールの利用に不慣れな教職員も多い現場では、使いやすさは重要なポイントだろう。
「in Campus School IM」は、教員・生徒・保護者のつながりを強化し、教員の働き方改革を支援する画期的なツールだ。
岸氏によれば、「新しいシステムを導入するのは簡単なことではない」という。「だからこそ、キヤノンITSでは導入・運用・保守まで伴走します。安心して先生方に使っていただけるサービスをこれからも目指していきます」
同社では今後もデータ分析機能の追加やAI活用など、現場の声を生かしたさらなるサービス改善を推進していく。